第27話 愛犬の死
令和三年、七月八日。
十六年一緒にいた愛犬が死にました。
結婚して二ヶ月で私の一目惚れでうちにやってきました。辛い不妊治療も彼女が私の慰めになってくれました。
長男が生まれ、分単位の睡眠しかとれなかった時、真夜中の話し相手は彼女でした。ベビーカーにお散歩の紐を引っかけると、ぐんぐん引っ張ってくれました。
離乳食を全く食べてくれない次男、一口食べさせるのに三十分かかったり、私のストレスを癒してくれたのも彼女でした。
旦那が単身赴任の時は、子供達が寝た後の話し相手だったし、冬の散歩は寒いけど、子供達とホットのコーンスープ缶をポッケに入れて歩くのは楽しかった。
三男が生まれてからは、あまり散歩をしたがらなくなって、三男のベビーカーのホロの部分に乗せたり、ミッキーの手押し三輪車の後ろ籠に乗ったり、ほぼ自力では歩かなくなってた。
椅子に飛び乗ったり、私達がいないときはテーブルにまで乗っていた彼女が、ちょっとの段差もこえられなくなって、一年闘病した。最近は病気は落ち着いてきたのに、老衰が進んでこの一週間、よろけても歩いていたのが、ほとん歩けなくなった。
オムツをはいて、身体を支えて水を飲ませて、いつの間にか床擦れまでできて、ご飯を食べなくなったのは三日くらい前から。
それでも水は飲んでくれてたのに、昨日から水も飲まなくなって。
昨晩は小さい声で呼ぶから、何度も起きて抱っこして、五時くらいからはずっと抱っこだった。仕事に行く前に下かそうとしたら、かなりしっかりと怒ってた。今までクタリとして鳴いても吐息くらいだったのに、「あれ、元気出た?」ってくらい私に文句を言ってた。
仕事終わって、スマホに息子から電話がきて、息子の号泣で彼女が逝ってしまったってわかりました。家に帰り、彼女を見て実感しました。
赤ん坊のように彼女を抱いて、抱き締めて、涙が止まりません。足元に彼女がいない。脱衣所が彼女の定位置で、いつも彼女をよけるようにお風呂から出るのに、彼女が寝てた筈の足拭きマットにすんなり足がのる。それがこんなに辛い。
狭い家だから、どこを見ても彼女の姿が思い出せるのに。
子供達に涙を見せたのは初めてかもしれません。
そして、まったくもって止まる気配がありません。
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