第8話 離乳食

 自分は【クリーン】を覚えてから、毎日の自己課題として【魔力操作】や【鑑定】、新【魔法】の練習など、毎日楽しみながらやり続けて、およそ半年位の月日が経過していた。


 何故、半年位かって言うと、自分の生活している部屋には、日数の分かる様なカレンダーが無いので、何日間、夜が明けたかって原始的な数え方で途中まで数えたけど、今ではあまり自信がない……。


 そもそもが、この世界での時間や日数の考え方が分からなかった。


 【ステータス画面】の項目に年齢というのがあるから、年単位の考え方はあると思うけど、ずっと同じ部屋にしか居ない上に情報が足りない生活は不安になり、不便だなと思い始めていた。


 確か、赤ん坊はあと半年位すれば動けるんだったかな?


 赤ん坊の成長具合なんて曖昧にしか覚えてないから解らないことだらけだなと思う。



 初めて父親と会ってから、父親は5回だけ帰って来たことから、月1ペースの帰宅なのかもしれない。 なんか前世の同僚にいた単身赴任してるお父さんみたいな感じだった。


 後は二重生活とかだと、お金が心配になるな……。


 しかし、夫婦仲は良さそうだから、単純に父親の勤務地が遠いかブラック会社勤めとかの、どちらかだろうと予想している。 これで父親が母親に虐げられていたら、涙が出てるかもしれない。


 自分の成長に関しては、首がすわり寝返りが出来る様になったので少しは自由度が上がってきたが、まだ活動範囲がベットの中だけであった。



 前世の記憶を持ちながら転生したから、意識がはっきりしてる分このベットのみの生活は辛い。 ある意味、拘束プレイか罰ゲームみたいな感じだ。


 ラノベによくある異世界転生は何故か3歳から始まる意味が今ではよくわかる……。 




 乳歯も生えてきたから、そろそろ離乳食がいけると思うけど、この世界に離乳食があるのだろうか? いい加減、ずっとミルクだけでは飽きてきたのだ……。


「あ~うあ、うわ!」

(ジャンクフードが食べたい!)



 まだこの世界の料理を見た事が無いからわからないけど、部屋の作りを見た感じは文明度は低そうな気がする。


 将来、スキルによるチート無双は微妙に出来なそうな気配がするので、【料理】革命や【建築】や【土木】などの【建設】系で活躍することも考えた方が良いかもしれない……。



 しかし、【料理】改革するなら貴族の息子とかが良かったな。


 まぁ、社交性が皆無だから普通が一番だけどね。




 あと【魔力操作】に関しては、ずっと続けていたら【ボックス】ってスキルを取得していた。


 【ボックス】の使用用途が不明だけど、【魔眼】の方の眼で見た時だけ、【魔力】が箱型に固定されてるのが確認出来たが、普通の方の眼で見ると、何も見えなかった。


 透明性の高い箱を作るスキル、必要性がよく分からない。


 この【ボックス】は大きさや重さも、込める【魔力】量次第で自由に変えられていた。


 【魔眼】のある自分には何かと便利そうではあるけど、【魔力】が見えない普通の人には使い道の無いスキルかもしれない。

 と言うか、見えない人はどうやって形を認識するのか不明だった。


 自分はデザインの仕事もしていたから、想像力は他の人よりはある方だとは思うけど、最初から見えない物の形を、フワッとした感じで想像は出来ても、正確な形を認識するのは至難の業な気がする。



 【鑑定】に関しては、使い続けた事により項目が1つ増えて、相手の【状態】が分かるようになった。


 【状態】は、人ならば良好とか寝不足など体調とかが分かり、木とかならば劣化具合がわかって思ったより便利だった。


 多分、食材なら鮮度とかが分かるのではないかと思う。 衛生管理がずさんな異世界ならば、それだけでも商売で食べて行けそうだった。


 【鑑定】項目の増え方が【ステータス画面】に表示されていた順なので、最終的には【鑑定】も【ステータス画面】位まで調べられる気がしてきた。


 この【鑑定】スキルの使い道は人物よりも物に対しての方が有効だと思う。


 物に使っても【名前】、【年数】、【状態】、【説明】が表示されるからだ。


 目利きが出来るのはとても便利だと思う。


 あと、お腹とか壊したくないから食事前は必ず【鑑定】していた。




 ☆




 乳歯が生えてから少し経ち、遂にミルク卒業になった。



 そして離乳食?が出てきたけど、それはよく煮込んで柔らかいけど大きめの野菜がタップリ入ったスープだった。


 ペースト状の食事は介護食みたいで嫌だったから良かったけど、もう少し野菜を刻んで欲しかった。 野菜の大きさが大人が食べるひと口サイズだった。 転生して死因がのどを詰まらせるとか嫌すぎるので是非もう少し小さく欲しい。


 あと、乳歯は生えていても、ほとんど噛めない気がする。



 見た感じ野菜は前世に有りそうな種類で、将来的には料理するのが楽しみになったのは良かったが、その野菜タップリのスープを食べさせては貰ったけど、美味しくなかった。


 塩の味しかしないスープと言えばよいのか、幼児の味覚は大人より敏感だから普通の塩の量でもしょっぱかった。 出汁が取れてなくて旨味も出てないから、本当にただの塩が入った野菜スープだった。


 前世で塩ラーメンが好きで、自宅でこだわりのラーメンを作っていた位なので、塩味だけの場合は美味しくするのは難しいのは分かるけど、この野菜スープは酷かった。


 味の要望を出したくても言葉が話せないので我慢して食べたけど、 まさか塩があるだけ幸せって事はないよね? そんな世界では生きていく自信が無い。



 それにしても塩分取りすぎは大丈夫だろうか、幼児期の塩分取りすぎは味覚バカになるからな、注意しないといけないはずだ。




 さり気なく、しょっぱいアピールしてみるか……。




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