天使になったせいで、なぜかかなりモテてます!?

薄紅 サクラ

プロローグ

第1話 これは、誰の記憶?

―――・・・ドンッ・・・


       ・・・ドサッ・・・―――



「……………は?」



「……………え。」



「………っな、んで……………っ。」




衝撃と共に、胸の辺りが熱くなった。

その熱は一瞬で通り過ぎていったけど・・・そのあと。



大量の『赤いモノ』が、胸のところから溢れて―――それがとても気持ち悪くて―――それから急に身体が重くなって―――何故だか眠くなって・・・―――。





―――『あたし』は、地面に崩れ落ちた。






足一つ、手一つ、指一つ・・・何一つ、ピクリとも動かない。重くて重くて、動かすこともできない。

身体中が、氷のように―――冷たく、寒く感じる。それはどうやら、『赤いモノ』が溢れていくのと同時に、身体中の熱を奪っていってるみたいで。

意識でさえも、もう少しで消えそうで。そのくらい、体力の消耗が激しくて。

目線を伸ばした右手に向けると、金色に光る羽が見えた。けれど・・・それすらも霞んで見えていて。

あぁ、もうすぐ私は死ぬんだと・・・消えかけの、朧気な意識のなかで思った。



そんななかで、

「ね、ねぇ?なんで………………?………寝てるの…?」

少しだけ、声が聞こえた。それは男の子の声で。まだ少し、幼い子供の怯えたような声で。


それから、

「は、ははっ。……、冗談…………………寝ぼけて………?」

少しおどけたような声。これはまだ、幼さが残っているような青年の壊れかけた声で。


そして、

「……嘘、だろ………。……、……ろよ。もう、……………?」

必死に『あたし』を呼ぶ声。これはもう、立派に成長した男性の、現実を否定するような声で。



―――最後に、

「『……』様……………下さい。もう………………………………………。」

どこか執事のような、丁寧で焦ったような声と、

「ひゃははっ!………っと、その『……』……………った…………………!!」

明らかに犯人の、声高く下品に笑う声が聞こえた。




―――同時に。

「………………っ!あいつをっ、『……』を………………!許さねぇ…………………ーーーーーーーー……っ!」

・・・『あたし』にとって大切なの、泣きながら憤怒した声も。

そのあと、爆発のようななにかが弾けた音も聞こえたような気がした。

けれど―――それを最後に聞く前に『あたし』の意識は。











―――儚く消えて、溶けていった。

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