act.40 Dr.クルックスの研究所

 ララ達一行は、その巨大な焚火を避けながら『ガラクタ置き場』スラップスティックへと入り込んでいく。戦闘は黄金色の86式多脚戦車でもあるDr.クルックスであった。


「私はどうしてこのような体になってしまったのかわからない。その謎は私の研究所にあると思う。ララ姫、もしよければ研究所に来てもらえぬだろうか」

 小さい三つ目をピカピカと光らせながら話すクルックスにララは頷く。

「それは構いませんが、私も行かなくてはいけない場所があるのです。あまり時間は取れません」

「その行かなくてはいけない場所とは何処かね」

「工業地帯の地下にあるという原子炉施設です」

「ふむ。そこならば入り口はわが研究所にあるぞ。ちょうど良かったな」

「ほほー」

「ララ様。そうなのです。そして、そこへたどり着くまで難儀すると思っておりましたが、先ほどの戦闘でほとんどのスクラップが排除されたため脅威はありません」

 シュナイゼルの進言に頷くララ。意志を持ち人を襲うといわれていたスクラップは先ほどツブツブオーに吸収されてしまったのだろう。わずかに残るスクラップの中に動くものは見当たらなかった。

 ほどなくDr.クルックスの研究所と思しき建物が見えてきた。それは建物と言ってよいのか悩む外観をしていた。先ほど出現していた勇者ロボット頭部がそのまま地面に設置してあるかのような出で立ちであったのだ。

「ドクター。あそこが研究所なのか」

「ああそうだ。ふむ。入り口は口の所だ。自動ドアで自動開閉するはずなのだが私は体のサイズが……どうすべきか……」

「とりあえず私が入ってみますよ」

 ララが入り口らしき場所へ立ち、扉らしきものを見つめる。しかし、何も起こらない。

「私はDr.クルックスの知人でララ・アルマ・バーンスタインという。今、Dr.クルックスと共にこの屋敷に来ているのだがこの扉を開いてはくれまいか」


『ララ・アルマ・バーンスタイン……あなたの生体認証は拒否されました。データの登録がありません。クルックス博士ご本人の生体認証を必要とします』

「融通を利かせろ。Dr.クルックスは、現状、多脚戦車の姿をしておられる。あのような姿で認証は可能なのか?」

『はい可能です。脳が収納されているコアパーツを分離され、小型ロボットへと変形することが可能です。クルックス博士。何度もご説明しておりますがお忘れでしょうか?』

 三階の窓にあたると思われる場所にある目のパーツを点滅させながらロボットの頭部のような家が回答をする。その問いかけにDr.クルックスは少し慌てた感じで答えた。

「おおそうだった。すっかり忘れていた。LG2-R1形態があったのだ。それに分離変形しなければ家に入れないではないか。すまんなララ姫」

 そう言って丸い頭を動かす多脚戦車。

 胸の部分から円筒形のパーツが分離し地上に落ちた。そのパーツは一体の小型ロボットへと変形した。それは円筒状の胴体に半球形の頭部がくっついている。両手はマジックハンドで短い脚の先にはキャタピラは装着されていた。

「最初からこうすれば良かったのだ。さあミラクル・ヤン。この扉を開放してくれ」

『お帰りなさい。Dr.クルックス』

 

 勇者ロボットの頭部であるDr.クルックスの研究所の入り口が開いた。

「黒猫とミハルは周囲の哨戒。フィーレ姫はヴィオレット・ツァオバラーから降りてきてください。悪いがヒナ子は外で待っていてくれ」

「ぴよ?」

「よしよし。悪さをするんじゃないぞ」

 ヒナ子に頬ずりをしてからララが研究所へと入る。一行はそれに続いた。

 

 研究所の中はやはり研究所であって、雑多なパーツや工作機械、コンピューターが所狭しと並んでいる。

「お茶を出さないといけませんね。どうだったかな。ラインハルト、ラインハルトはいないか」

『クルックス博士。助手のラインハルトは先ほどの戦闘で破壊されてしまいました』

「なんだと!?」

『この社長戦争に徴用されたのです。彼、ラインハルトは笑いながらここを出ていき、そちらにいるララ様と堂々と戦われたのです』

「あの最後にぶっ飛ばした86式がラインハルトだったのかな? 悪いことをした」

『いえ、大丈夫ですよ。ラインハルトはAI搭載型のロボットです。そのAIの複製をLG2-R1ロボットへと移植すれば即座に復活できます。それよりもクルックス博士。お体の調子はいかがでしょうか? 亡くなられてから直ぐにサイボーグ化手術をいたしました。ボディはご所望であった素子タイプは準備に時間がかかるため、既存のLG2-R1ロボットを使用しました。これは86式多脚戦車の脳髄搭載コアユニットを兼用しております。4日前のことでございます』

「そうか、そうであったな。やっと思い出した。ところでツブツブオーはラインハルトが完成させたのか?」

『はい。未完であった目元のデザインを私、ミラクル・ヤンと共に完成させることができました。86式多脚戦車を使用する中型バージョンはラインハルトがコアとなり起動します。このスラップスティックのスクラップを大量に使用する大型バージョンはクルックス博士をコアとして起動します。その雄姿は見事に世に示され、博士の偉大な研究はここにおいて完成したと宣言できます』

「そうか、ありがとうミラクル・ヤン。ところでラインハルトはいつ復活できるのかね」

『一両日中には可能です』

「すぐにとりかかってくれ」

『了解しました。博士』

「うむ。ところで皆は地下の原子炉へ向かうと言っておったな。すぐにいくのかな?」

「なるべく早く出発したい」

「わかった。では案内しよう。こちらのエレベーターだ」


 部屋の中心にあった円筒状のエレベーターの扉が開き一行がその中に入る。扉が閉まりエレベーターは地下へと向かっていった。


※ネーミング等苦しくなってきたのでロボットの名前は某有名メーカーのヨーグルトの合体技。その姿は某有名SF映画のキャラそのまんま。博士は超有名な英国の実在科学者の名前をそのまま使用、助手のAIの名前もあの有名作品から丸パクリ。こんだけ堂々とパクってしまえばかえって清々しいなと思うのです。


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