第14話 ベーコンは美味い!

「ちわー」


俺はある場所に来ていた。


「ラーク、いらっしゃい。頼まれていたものが出来てるよ! 」


彼はリリック、ぼさぼさ頭に水色の前髪が目にかかっている。年は18なので完全に独り立ちしている。



俺は彼にある依頼をしていた。


「これでいいのか? 」


「おーこれこれ!!! 素晴らしい最高!! いつもながら腕いいね! 」


彼には敬語を使わない。

一回り近く年上だが「堅苦しいのが嫌」って言われたから……でも、どんどん地がでてきて、俺本来のしゃべりになっている。



俺の目の前には木炭があった。炭同士をぶつけると固い音がした。



リリックに土で作った窯を作ってもらい、中に切った木を入れて入口付近に火をつけ、蒸し焼きにする。水分が抜け切ったら、中の木に火をつけて、中の木が燃えて炭化するのを見計らって、入口を閉じて密閉にする。そしたら冷め切るのを待ってから取り出す。


手間と時間がかかるがこれで調理が便利になる。

木の薪でするよりも、高温で安定した火力と長い燃焼時間で煙も出にくい。


「ありがとう、これで思うような料理ができる! 」


リリックには俺が頼むものを作ってもらっている。冷蔵庫も彼の自信作だ。



「いや、ラークの頼みならなんでもするよ」



彼は独り立ちをしていたのだが、口下手で人付き合いの悪い彼は、村から孤立していた。

同じように村人とは孤立していた(俺はわざとだけどね)俺と仲良くなった。


それで手先の器用な彼には、俺が欲しいものをいろいろと作ってもらっている。

いろいろと作って貰っている物で都で売れる物は、村を通じて売ってもらっている。そしてその売り上げは、彼に行くようにしてもらっている。

俺は金は要らない、なんせクラークに養ってもらっているからね。


「じゃとりあえず、これがベーコンね」


俺はオークで作ったベーコンを机に置く。

オークの肉を岩塩で塩漬けにして一週間、そして10時間ほど塩抜きしてから1日間冷蔵庫で乾燥。できたものをリリックに作ってもらった燻製器と木のチップで燻製。

手間がかかるが、納得がいくものが出来た。


「これがベーコン? 」


リリックが飴色に変色したベーコンを不思議そうに見る。まあそうだろこの世界には、どこにも存在してないはずの燻製の品だ。


「食べてみ、これは常温保存が出来るし美味しいよ! 」


俺はナイフで切り取ったベーコンを火の魔法で軽く炙る。

リリックには魔法のことを隠してない。誰かにしゃべることがないからだ。


もちろん口止めはしている。


「美味い……すごい! 」


感嘆の声を上げるリリック、そりゃーそうだろ。前世でたまに作っていた俺も美味いと思っていたからな。まあ完璧を求めるなら砂糖を使って無いのが残念だけどな。


「じゃあ、木炭のお礼がこれで……村長との交渉次第では、これからはこれがかなり売れる主力商品になるよ! 大量に作ってもらわなければいけないけど、まあとりあえずはこれでいいや。もしかしたら、このベーコンも作り方教えるから、これから作ってもらうように、なるかもしれないけどね。」


俺は木炭を持って帰る準備をする、次は村長の家で交渉だ。


「いいのか? また俺ばかりが、得するようになってしまう」


ぶっちゃけ彼は、俺と出会うまではまともな生活が出来てなかった。この村に家族はいるのだが15歳過ぎると、基本は支援をしないのがこの村のルールだ。

それで俺はリリックを助けるためにいろいろと商品の作り方を教え、村長と交渉して、まともな生活ができるようになったということだ。


「いいよ、いいよ、めんどくさいことをしてもらっているだけだから。あと俺は父さんに、まだまだ養ってもらうつもりだからね」


俺は目の前でおばちゃんみたいに手を激しくふる。




「なんだ、ラークが来ていたんだ」


リリスが入ってきた。そうリリックはリリスの兄なのだ。

彼女はリリックが心配なのか、なぜか最近よくこの家・・・・・・・で会うようになった。



「まあね、ちょっと頼み事していたから」


「また、兄貴に無理難題言っていたの!? 」


ちょっと怒ったように言ってくる。まあ確かに大変面倒なことを頼んだことは認める。


「こら、ラークは俺のためにしている。勝手な口出しするな!! 」


リリックが叱るとびっくとなってリリスが、ちょっと泣きそうになっている。


「無理難題のめんどくさいことを、頼んだのは確かだからね。僕が悪かったよ。これからも忙しくなるかもしれないし、じゃあリリックまた」

そそくさと逃げるようにリリックの家を後にする。

どうも俺は彼女が苦手だ。

悪い子ではないのだけど、やけに俺に絡んでくる・・・・・・・から対応に困ってしまう。


「あっラーク」


なにか彼女が呼んだ気がしたが、素早く移動して身体強化魔法村長の家を目指す。










「どうですか、これを売ればかなりの儲けになります。今、村にいる冒険者に試してもらえば、わかると思いますが、乾麵のパスタ同等以上の収入に、なると思います」

 

村長のぺぺは火をつけた木炭を不思議そうに見ている。


「うん、これも間違いなく売れるだろうね、で製造方法は? それもまた教えてくれないのかな? 」


2メートル近くあるもある体格のいい村長のペペは、俺を覗き込むように聞く。

俺はリリックが作った物の作り方を、教えてなかった。まあその気になれば思い付く難しい技術ではないけど、少しでもリリックの儲けになればと思って教えてない。

まあリリックを孤立させた村を信用してないからだけど……。

いつ、彼の仕事を奪うかもしれないかと、思っていたからだ。


「そうですね、教えてもいいですが……リリックの儲けをしっかりとしてもらえば、……例えば全体の売り上げの7割を、彼の儲けにするなら良いですよ。」


俺はペペの顔を見つめて言った。彼は茶色の髭を撫でながら表情を曇らせる。


「それは、無理だなよくて1割!」


「駄目ですね、良くても6割」


「わかった、なら2割これ以上は無理」


「そうですね特許として全体の売り上げの2割で、彼が作るものは販売価格の7割で買い取るなら良いですよ」


ふう、と大きくため息をつくぺぺ。


「お前、本当に7歳か? 実は大人だろ」


俺はギクッとする。ハイ、確かに中身は大人です。


「見ての通り、成人前の子供ですよ!……このベーコンを食べますか? 」


俺はベーコンを切って炭で炙る。


「お前、なんでそこまでリリックに肩入れする?自分の儲けは一切ないだろう?なぜだ家族でもないし、大した関係でもないだろ……もしかして、恋人同士なのか? 」


「なんでやねん!そんな趣味ないわ!! 」


思わず関西弁のツッコミを入れた。俺は女顔だがノーマルだって言っているだろが!!!

ぺぺは俺の勢いを、びっくりしている。


「あっすみません。……ただ彼が困っていたのを見ているから……単なる同情ですよ。特にはないです。自分はまだ親に養ってもらってますから、金は必要ありませんしね」


俺をじっと見てから


「俺の息子にならんか?」


「えっ??? 」


何言ってんだこいつ!


「俺には一人息子のポポしかいない、ポポと結婚してくれ!!! 」


「だから俺は女顔だが男だ!男同士結婚できるか!!? 」


やっぱり元凶はこいつか! ポポの親村長でなかったら村の外までぶっ飛ばして風魔法でいたぞ。


「いやいや、ポポの嫁を見つけて……そうだなセララ辺りはどうだ、ポポとセララとラークが結婚、それが嫌ならもう一人……リリスがいいだろう?足りないなら、他にも嫁をいれて、多夫多妻婚してくれたらいいよ」


多夫多妻……日本人からすると、とんでもないこと事だわ! てか、頭がクラクラする展開だし……。


「いやお断りします」


炙ったベーコンをペペに差し出す。


「むむ、即答か……仕方ない。これ以上言うとお前ら一家に逃げられそうだからやめとくか…………うめーなこれ、これも新作の料理か! お前はどれだけ天才なんだよ! この神童め! ちくしょう、うめーぞ! さっきの条件を飲むから、これの作り方も教えろ!! 」



おっっしししっ!!! なんとか村長ぺぺとの交渉成功した。

仕事の方もリリックの負担にならない程度に、儲けれるようになったぞ。









なぜかドアの隙間から「残念」と言う声が聞こえたような気がした。

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