第10話 冒険者がやってきた。


キマイラを倒した翌日には、早馬に乗った使いが王都の冒険者ギルドに向かっていた。


クラークは村の者達と相談をしていた。

キマイラが近くにいたという事は、村にとっては重大なことだった。


下手すると村の壊滅、良くても犠牲が出るのは必至と思われたからだ。

流石にクラークだけでは対抗出来ないということで、冒険ギルドに連絡し冒険者を20人ほどを村で一ヵ月間雇うことになった。



俺が『キマイラは俺一人で倒して魔法で消滅させました。テヘペロ』と言えば、そんな冒険者達を雇わなくても済むとのだが、流石にそれは言えない。


大体死体もないのに、7歳児の言葉を信じる人がいるとも思えない。


金はかかるが乾麵のパスタ俺のおかげで儲かっている村だ。

それぐらい払っていても問題はない。






そして、3日後には村に冒険者がやってきた。



そろそろやってくると言うことで、村民総出のお出迎えすることに。


まあイベントの少ない村だからと言え『冒険者さんたち ようこそ』の垂れ幕はどうかと思う。


俺だったら……これをされたら恥ずかしくて帰りたくなるぞ。


でも正直、俺はドキドキしていた。


クラークとシール以外の冒険者を見たことないからだ。


どんな人がいるんだ、獣人は?エルフは?ドワーフは?もう、頭の中はライトノベルの世界!


いろいろと妄想させて興奮していた。


獣耳のケモノミミ少女との恋……。

狼系の耳の可愛い女の子が尻尾をふりふりとさせて、「ラークさん好き」と言われ、エルフの可愛い女の子にも好かれて「……ダメ、ラークは私だけの物だから……」取り合われて、「俺はみんな好きだから」なーんてことをうひゃひゃひゃ。




「なに気持ち悪い顔しての? 」


リリスが俺の顔を覗き込むようにして言った。

水色の髪の長い髪をして少し目元がきつい感じだが、彼女はかなりの美人だ。


「いや、どんな冒険者が来るのかなって」


なぜか心が読まれた気がして、目線をそらした。

かなり恥ずかしくなったからだ。


「ふーん、そんな顔ではなかったけどな……てっきり冒険者との恋とか、考えていたとか思っちゃった」


リリスは意地悪な微笑みをした。俺の心読めるのか!!?エスパーなのか?それとも新種の魔法か?


「そっんなことな、ないよ」


俺はどもってしまった。


バシッ


「バーカ」


俺は殴られてしまった。俺が何をした。




「ラーク君も楽しみなんだ、実は私も楽しみ」


今声をかけたのは、雑貨屋の娘のセララ。

俺とは5つ年上12歳で紫の髪をしている。


この村ではシール母さん治療師である。

セララは治療で使うための薬を、作る手伝いでよくうちに来ている。

だが、彼女は冒険者あこがれが強いみたいだ。


最近はシールに魔法を習っているが、どうも計算ができなくてと魔法が成功しないと嘆いていた。



「神童は冒険者にでもなるのか?村のために一生、家で食べ物の研究でもしたらどうだ」


またこいつか……。


こいつはセララの弟でクール。

なぜかやたらに俺に絡んでくる。同じ年の俺が、神童としてもてはやされているのが悔しいみたいだ。


俺は「だりぃ奴がまた来た」と、冷めた目で見つめる。


「なんだ、やるっていうのか」


俺に突っかかって来ると。


「あんた、またラーク君にケンカ売っているの?もう、どうせ負けるのに」


セララがクールをたしなめる。実はこないだも俺にケンカを売ってきたので、思いっきり素手で(こいつごときには魔法なしで)コテンパンに返り討ちしてやったのに、まだ絡んでくる……うざい。

ちなみに髪は茶色なのでセララとは、種違い父親違いの兄弟になる。



まあ村にはそれなりの子供がいて、子供同士はそれなりに仲がいいのだが、俺の場合は本来の引きこもり体質で、他の子供とは接触を積極的にはしてはいない。


例え、遊ぶことを誘われても拒否していた。


子供なんかと遊ぶより魔法の訓練したほうがマシだったからだ。


だが、シールやクラークの関係でせいで、こんな感じで何人かは仲良くは(一部を除く)なっている。


村長の息子ポポにいたっては、村長の家に沢山ある書籍目的で入り浸っていたらなんとなく仲良くなってしまった。

彼も俺と近い感じの引きこもりで、読書好きだからかもしれない。


俺と結婚するとか言わない限りは、気の良い奴だから仲良くしている。




「来たよ」


リリスは俺たちに向かって教えてくれた。




村の入り口から馬車が何台も村に入ってきた。馬車が止まり、中からいろいろな冒険者が降りてくる。


先頭の馬車から降りてきた、リーダーらしき厳つい男性がクラークに近づいてきた。


   

「よークラーク、ずいぶんとすごいとこに呼びつけたな」


「マッシュ悪いな、流石に俺一人では無理だからよ」


二人はお互いの肩を叩きあった後、固く握手をし合っていた。


「田舎に引きこもっているのに、よりにもよって金級のモンスターとはついてないな」


マッシュと言われた男性はクラークよりも少し年上の30代半ばぐらいで顔は厳つく、緑色の坊主頭。

腰には二本の剣をぶら下げている。思わずあともう一本差していたら、どっかの三刀流かと思ったぞ。


「なんとか生き残っただけも、かなりついているよ。まあ生きているのはうちのラークのおかげだ。ラークおいで」


クラークが手招きして呼ぶのでクラークの元にいく。


「おっ、こいつがシールとの子供か……びっくりするぐらいシールにそっくりだな、違うと言えば髪の色ぐらいだろ」


マッシュが俺の頭をちょっと乱暴になでる。見た目と違い、子供が好きなみたいだ。ものすごく優しく笑ってくれる。


「ラークと言います。父がお世話になっております。」


俺は軽くお辞儀をして丁寧に受け答えをする。マッシュは感心した顔した。


「お前の子供とは思えんな、礼儀を知っているし、流石シールの子供だ。本当に血が繋がっているのか?髪の色が違うし、昔、俺に無礼な態度をしていた、お前の子供とは思えんわ、絶対に他の人の子だろ」


と……俺が過去に疑っていたようなことを言ってくる。


「バカ、俺の爺さん譲りだよ、この黒髪は!!!こんな可愛い子は俺の子供以外に、あり得るわけないだろ」


クラークはマッシュの腹にパンチをする。もろに喰らったみたいで少しよろけるマッシュ。


「・・ごほっ・・そっか、よしお詫びに、俺の息子と結婚させるか?!」


「いや、僕は男です」


俺はすかさず答えた。なんで短髪にしていて、ラークと言う名前なのに女と思うかな?


ポポといい俺はノーマルだ。男はいらん。


「えっーーーー!!」


うん、わかりやすいリアクションどうも。最近村ではされない反応だったから、久々にみた。



「うちのラークは誰にもやらん」


クラークさん、行き遅れになる女の父親のようなセリフは止めていただきたい。










宴が始まっていた。



「うまいな、どの料理も、食べたことのない料理ばかりだ」


晩餐には、俺が考案した料理であふれかえっていた。パスタにラーメン、餃子に蒸して作る肉まんやローストビーフなどなど、俺が思い出して現状で作れる料理の数々が並んでいる。


冒険者たちは我先にと、料理を食べて楽しんでいた。



「すごいだろ、俺の息子は天才だろ」



ちなみにクラークの怪我のことは、俺が魔法を唱えたら運よく治せたということにしている。

クラーク自身は、最初の一撃の怪我以外は感じてなかった。


それは戦闘で興奮していて痛みを感じてなく、その上防御魔法が利いていたと勘違いしていたから、大した怪我ではなかったと思ったみたいだ。


最後の内臓が見えるレベルのスプラッタな怪我は、クラークが一瞬で気を失っていたからな。

まあ、実際には心臓が破壊されていたから死にかけていたしな!


そして俺は何かの遠吠えが聞こえたから、キマイラが逃げて行ったということにしている。


んで、クラークの治療をしたら魔力の使い過ぎで、気を失ったという事にした。



「その年で治療ができるって流石、シールの子供だ」


「俺の子だからだよ」


クラークとマッシュは俺をさかなに二人で浴びるように酒を飲みまくっている。




マッシュの話を聞くところ、こうだった。


こないだ倒したキマイラは冒険者ギルドでも有名で、かなりの討伐依頼が来ていたそうだ。 


そいつはいくつもの村と町を壊滅させていたお尋ね者のモンスターだった。

かかった賞金は85万ギルだそうで、死体を持っていけばそれだけ支払われる。


……俺は魔法でキマイラを消滅させたことを悔やんだことは言うまでもない。


この村からキマイラ防衛の依頼が来たので、ここを拠点にするため報酬はいいから必要経費と飯の用意だけでいいってことになった。


村の集会所で大半の冒険者は泊まり、あふれた数人のメンバーは使ってない村の空き家とテントに泊まる事になっていた。





そのことはいいのだが……。



「あっ君が神童のラークにゃんか?噂を聞いたよ、この料理を君が考えたにゃんて、すごいにゃんね!」


「君カッコいいね、良い匂いがするワン!」


「お姉さんと遊んでみる?」



猫や犬と兎の獣人の女の子たちが俺を取り囲み、ちやほやしてくれる



彼女たちのはちきれんばかりの大きな胸が俺の目の前で大きく揺れる。




だが……。



















獣人って顔がもろに獣やん!!!


猫耳だけは!

犬耳だけは!

バニーガールは?

美少女の獣人は!


そこにいる獣人はもろに二本足で歩く犬と猫と兎だった。どう見ても毛むくじゃらの獣だった。


ライトノベルでよくある猫耳とかだけの顔が人間の可愛い女の子は……この世界に存在しないのであった。





……ちくしょう。

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