第15話 そして三浦へ

 翌朝八時頃、わたしたちは電車に揺られて三浦半島の幼児失踪現場に向かっていた。


 結局、親から許可が得られなかった子はいなくて少しほっとした。


 みんな普段は真面目に登校しているし、パフィンちゃんは常に学年トップの成績、その他みんなも悪くはない成績だったので、1日限りという事で学校にも連絡を入れておいてくれるそうだ。


 みんなのバッグの中にはそれぞれ、地図、救急用具、懐中電灯、タオル、ロープ、お弁当、動物の泣き声を録音するための集音器、茂みを伐採するナタ代わりにチャチャちゃんの中華包丁など、役に立ちそうなものが入っている。


 服装も野外で活動しやすいものをチョイスしてきた。わたしは、以前家族でキャンプに行った時に買ってもらったモンベルのウェアだ。


 かばんも、みんなもしもティティアンノートで鳥に変身した時に翼の動きの邪魔にならないよう、リュックとショルダーバッグの2wayで使える物をチョイスしてきた。


 準備は大丈夫のはず。そうして電車が目的の駅に着いた。


 電車のドアが開き、駅のホームに降り立つと、緑と潮風の混ざった匂いがしてくる。


 「わぁ~海が見えるよ~!!」


 わたしが思わず声を上げると、


 「海なんていつも山下公園でみてるじゃない」


 と、すかさず楓ちゃんのツッコミ。



 「それはそうなんだけどさ、ほら、砂浜の海の匂いって、港の海の匂いと少し違うじゃん??」



 「そうねぇ。もし海水浴目当てで来ていたのなら、すごくワクワクしていたと思うわ」


 彩先輩のフォローが入る。



 「さあ、早速行方不明になった子のおじいちゃんの家に向かおう。歩いて20分くらいだね」


 チャチャちゃんが指をさしながら先頭を歩く。



 「フキンシンだけど、みんなで遠足に来ているみたいで少しタノシイ☆」

 

 「三浦半島は自然がかなり残っているから、バードウォッチングにも最適なんじゃないかしら。

 半島の反対側には油壷マリンパークっていう水族館もあるし、こういう機会でなければ行ってみたかったわね」


 パフィンちゃんとおねえちゃんも話しながら後に続く。



 しばらく海岸沿いに歩き、途中を曲がって坂を登っていく。片側は木や雑草などの生える林で、反対側は緩い傾斜になっており、下には小さな川が流れている。


 テレビで見た失踪現場と同じ風景が広がっていた。すでに何人かの警察官や消防団と思われる人たちが、林や川の中を捜索しているようだ。


 そして坂の途中を左に曲がると、これもテレビで見たのと同じ、行方不明の子のおじいさんの家だ。


 家の前で、ご両親らしき方たちとテレビカメラの取材が何人かいる。取材に答えているようだ。ならちょうど良い。


 わたしは小走りに駆けて行って、テレビのレポーターといったマスコミをかき分けるように進み、ご両親に話しかける。



 「あの、わたしたち、横浜からボランティアで捜索に来ました!お役に立てるかも知れません!!」


 するとマスコミの人たちが


 「何だね君たちは?今取材の最中なんだから邪魔をしないでくれたまえ!!」


 と邪険そうな態度を取る。するとチャチャちゃんが、


 「ハァ?自分の足で捜索に協力もしないマスコミの分際で、何イキってるんだか??今のご両親と行方不明のお子さんにとって、

事件を視聴率稼ぎの道具としてしか見てないマスコミと、実際に足を動かして探してくれる即戦力六人と、どっちが必要ですか!?」


 チャチャちゃん、ガラ悪い…


 そういえば、チャチャちゃんの家の中華料理店がマスコミの視聴率稼ぎの道具に使われた挙句に、ある事ない事書きたてられ、悪評が立ってしまった事があるとわたしの両親から聞いたことがある。


 そういった事もあって、多分マスコミが嫌いなんだろう。



 「この子の言うとおりだ、中に入って、話を聞いてもらおう」


 そう言ってくれたのは父親のほうだった。


 「そうね…六人も探してくれる方が増えるのなら、ありがたいわ…どうぞ中へ」


 母親にもそう声を掛けられ、わたしたちは家の中へと案内された。


※※※※※※※※※※※※※


主人公周りの設定ですー。


飛鳥川 鈴(あすかわ りん) 本作の主人公。フォッサ女学院中等部生物部に所属する中学1年生。不思議な本「ティティアンノート」を発見したことから、動物少女に変身できるようになる。

絵が下手なので、ティティアンノートにスケッチを描くのは一苦労。ペットはフクロウのスピックスコノハズク「スピピ」


下連雀 彩(しもれんじゃく あや) 中学2年生、生物部。しっかり者の優しい先輩キャラ。ペットは三毛猫の「マーブル」


燕昇司 楓(えんしょうじ かえで) 中学1年生、生物部。家はネットカフェチェーンを経営している。

昔のマンガなどに詳しい。ペットはウサギのネザーランドドワーフ「キャラメル」


馮 佳佳(フォン チャチャ) 中学1年生、生物部。中国系の女の子。 家は横浜中華街の料理店、「壱弐参菜館」。

料理が得意。お金が好き。ペットはヨツユビハリネズミの「小太郎」


パフィン・アルエット 中学1年生、生物部。外国から来た生徒。飛び級で進学しているため現在10歳。

日本在住5年。好奇心旺盛でツッコミ大好き。ペットはパピヨン犬の「パピ」


飛鳥川 優衣(あすかわ ゆい) 鈴の姉。フォッサ女学院高等部の高校2年生。ちょっと天然の入った性格。

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