1-8 ステータスは職務経歴書みたいなもの

 俺の転職のアドバイザーの人は、なんと金髪、巨乳、シスター、という三種の神器を兼ね備えた女性だった。挙動をするたびに主張される胸は実に甘美なものだ。現実世界ではお目にかかることのできない男のロマンだろう。ぜひパンツも見せていただきたい。


 「ステータスのランクによって就ける職業が変わりますので、まずはあなたのステータスを見せて欲しいの」


 フランクな口調で語りかけてきた巨乳シスターは、目の前に水晶の玉を取り出す。


 「これは?」


 「これに手をかざしてもらうと、あなたのステータスと適した職業がわかるんだ」


 「うわあ、便利なアイテム」


 「便利っちゃ便利なんだけどね。結果が気に入らなかった人からクレームを貰ったりするから、良いことばかりじゃないのよね。だから、あんまり自分を過信しないでね」


 はあ、とため息をつくシスターさん。異世界なのに世知辛いものである。


 「正直、もう諦めてますけどね」


 俺はやけくそ気味に水晶に手をかざす。すると、青い光が発光し文字が浮かび上がる。



名前:シンヤ

筋力:D 体力:D

防御:D 魔力:E

敏捷:D 運命:E

ユニークスキル:S

 


 「うーん、平均以下のステータスだね。これだと初級職どころか基本職からになるね」


 開幕早々、目の前にいる俺の担当のシスターは残酷なことを言う。


 「……そうですか」


 レインの視線の意図はこういうことだった。

 ああ、死にたい。穴があったら入って埋まって窒息したい。


 「あ、でもユニークスキルはSランクだ。すごいね!」


 「ああ、そうだ! これってなんか特別な職に就けたりするんですか?」


 「そうだね。ユニークスキルを活かした職業に就くことが出来るけど、ちなみに君のユニークスキルって何が出来るの?」


 そう聞かれると返答に困ってしまう。父性スキルだから子育てかな?


 「えっと、すごい子育てができます」


 「ごめんね、よくわからない。具体的に何が出来るの?」


 何と言われても、なんて説明すればいいのだろう? とりあえず、さっき発動したスキルについて説明しようかな。


 「あの、叩かれて固くなったりします」


 「…………」


 あれ? なんだろう、シスターさんが犯罪者を見る目つきをしているぞ。


 「あと、子供の居場所を突き止めることが出来ます」


 「最近この近辺で変質者が出ると聞いたけど、もしかして……」


 「違うよ!? あなたは何か勘違いしていらっしゃる!」


 「でも、子供を捕まえて、叩かせて股間を固くするって……」


 「言ってねえよ!? 改変しすぎだろ! しかも説明した順序が逆じゃねえか!」


 確かに俺の説明も不足してたけども、情報操作にも程があるでしょ!


 「なんにせよ、そのスキルでは難しいですね」


 「あはは、ですよね」


 あーあ、やっぱり転職の際は資格と実績が命なのね。現実でも異世界でもそこは変わらないだなんて残酷すぎない?


 「げんきだしえ」


 目に見えてガックリと肩を落としていただろう俺に、誰かが励ましてくれる。

というか、この舌足らずな口調は聞き覚えがあるぞ。


 「シャン、なんでついて来てんだ!?」


 「パパがしんぱいだからついてきたの!」


 こんな子供に何を心配されることがあろうか。

 すると、シャンは不思議そうに水晶を見つめて、


 「シャンもさっきのぴかぴかやってみたい!」


 なんて言い出す。


 「シャンがやっても意味ないと思うけど」


 「やりたいやりたい!」


 駄々をこねだすシャンが面倒だったので、抱っこして水晶の前に立たせる。それに結果が出ればすぐに飽きるだろう。


 「この水晶に手をかざすんだ」


 「うん! パパありがとー!」


 シャンは水晶に手をかざすと、俺の時とは違い、赤い光が水晶から放たれ文字が浮かび上がった。

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