Q.あなたにとって魔王さまはどんな存在ですか?

□剣の師匠のようなもの□


村上・ケイシュタイン・崇さん(34)

出身:アウシュテルリッツ村

職業:勇者、勇チューバー


「そうですね……剣の師匠のようなものでしょうか。正式に弟子入りしたわけでもないんですけど。彼の剣技は素晴らしい。あれほどの体躯と筋肉でしょ? なのに捌き方が華麗なんですよ。あれだけ大きかったら、普通はパワーでゴリ押しするじゃないですか。私は勇者で、魔王さまは魔族側なので普段あまり話す機会はないんですけど、いつもこっそり稽古とか覗きに行ってます(笑)。できればもう一度手合わせして、今度こそ魔王さまに勝ってみたいですね。そしたら、私を魔王さまの仲間に入れてください(笑)」



□非常に厄介なお客さん□


ゲイボルグ陽介さん(54)

出身:王都デルリィン

職業:宮廷料理人


「魔王さまは、非常に厄介なお客さんですよ。なんせあんな見た目なのに、舌だけは肥えてるんだから(笑)。特に辛いものにはうるさくてねえ。でも最近は、晩餐の後でもわざわざキッチンまでやってきて、『ありがとう』だとか『おいしかったよ』なんて言い始めるようになってね(笑)。案外あの勝負の事気にしてるんだろうか。こっちはいつも気合い入れて作ってたからね、あんな風に態度変えられちゃ、包丁の調子狂っちゃうよ(笑)」



□いじりがいのある、かわいい後輩□


エリザ=スタンフォードさま(868)

出身:イシュタール洞窟

職業:魔女(元世界征服者)


「いじりがいのある、かわいい後輩って感じかな。それにしても、世界を征服したってんだからもうちょっと堂々としてればいいのにって思うよ。昔からちょっと気が弱いってか、『気にしすぎ』なケがあるね。でもあんなんでも世界を征服出来ちゃうってんだから、子供たちにゃ少しは希望になったんじゃない? 私って強いしかわいいし、高嶺の花すぎて手が届かないって諦められちゃうタイプじゃん? ハルみたいな弱っちいのにできるんだったら、自分にもできるって思えるじゃん(笑)。そうだ。今度また二人で洞窟においでよ。前回のダンジョンはちょっと簡単すぎたみたいだからさ、魔族たち徹底的に鍛え直して、ちょっとやそっとじゃクリアーできない高難易度用意しといたから! そんな、花ちゃん、遠慮しないでいいから! あれ? どこ行くの? 花ちゃ〜ん……」



□征ェスの顔□ 


ジェラール・丸瀬・ドバルディルさん(1412)

出身:王都デルリィン

職業:イベントコンサルタント(夏征ェス・冬服ェス主催者)


「ええ。魔王さまは征ェスの顔みたいなものでね。毎回毎回すごい人気で、コッチも大変お世話になっていました。一番の思い出は……やっぱり最初に参加した征ェスかな。ええ、しっかり覚えてますよ。魔王さまもまだお若くて、緊張してて。膝なんかガクガク震えちゃってんだけど、ステージに上がってお客様の前に立ったら、これがどうしたもんか人が変わったんじゃないかってくらいしっかりマイクパフォーマンスしててね。ええ、こりゃあすごい若手が出てきたなって思いましたよ。そしたら案の定世界征服でしょ? みなさんも、これから伸びる若手が見たかったらぜひ征ェスに来てくださいよ。魔王さま以外にも、生きのいい若手は世界中にいっぱいいますから。オススメ? そうだなあ……魔王でしょ、魔王に、[魔王]、それから魔王もいいな。ベテラン勢だって負けてませんよ。彼らも経験豊富ですからね。若さと勢いだけでぶつかって行っちゃあ、痛い目見ますよ(笑)。とにかく楽しい事間違いなしです。お待ちしております」



□最初に会った時はまあ驚いた□


クラーケン武田さん(137)

出身:アムール街

職業:海鮮料理屋『アムール亭』店主


「最初に会った時はねえ、まあ驚いたってもんじゃねえよ。『カレー味の海鮮料理が食いたい』なんて抜かしやがる。もう肝っ玉全部ひっくり返ったね。腰抜かしながら『ざけんじゃねえ、そんなモンあるかってんだい。こっちは何年商売やってると思ってんだ』って言い返してやったさ。だけど奴さん、全く譲らなくてねえ。『できないんなら、他のとこで頼みます』と来たモンだ。できないなんて落胆されちゃあ、こっちも料理人のプライドってモンがあんのよ。それでカチンと来て、『おう作ってやらあ!』って。それで出来上がったのが、ファンタジア初の『しーふーどかれー』さ。おうよ、今じゃ世界中に広まってるけどさ。ありゃあ、ウチが初めて作ったんだ。おかげで商売繁盛でね。魔王さんにゃあ、足向けて寝られねえや!(笑)」



□またお近くにお寄りの際は、ぜひ当旅館をご利用くださいませ□


鹿波・イヌイ・金子さん(78)

出身:ゴマタゴマ山

職業:『ゴマタゴマ温泉旅館』女将


「いつもお世話になっております。ゴマタゴマ温泉旅館をご利用いただき、誠にありがとうございます。当旅館は昨今近隣の活火山に棲むドラゴンに悩まされておりました。しかし先日魔王さまがお世界をお征服になられてからと言うもの、ドラゴンたちも大分なりを潜めまして、おかげさまでお客様に心行くまで露天風呂を提供する事ができております。重ねがさねお礼申し上げます。

またお近くにお寄りの際は、ぜひ当旅館をご利用くださいませ。いつも魔王さまが好んでお食べになられる『ドラゴンまんじゅう』や『ユニコーンゴマ団子』、『タゴマ鍋』をふんだんに用意して、おもてなしさせていただきます」



□いまだに信じられない□


吉田サラマンダー輝男さん(542)

出身:ミキトキ村

職業:世界征服者(画像処理担当)


「ンー。なんつーか、俺自身は腐れ縁だと思ってるよ。俺は学校出て、最初は仕事決まんなくてよ。そしたらなんかあいつが世界征服したいってんで、ブラブラしてた俺に声かけてくれたんだよな。最初は『この歳になって今更世界征服かよ』ってのは正直あった。でも俺も暇だったし、他にやる事ないから軽いノリで地図の画像処理引き受けたんだよ。そしたらなあ、まさか本当に世界を征服しちまうとはよ。しかも今回が二回目と来てら。いまだに信じらんねえな。あのハルトがだよ? 一緒に教室で、カレーパン食ってたあいつがだよ? 世界征服しちまうんだもんなあ。びっくりだよなあ」



□もうどうしようもないと途方に暮れていたところ、相談に乗ってくれたのが魔王さまだった□


ロングホープ吉田さん(27)

出身:カダカラール市

職業:市役所職員


「私にとっては、命の恩人です。魔王さまが市を征服してから、確実に街並みが良くなっていると感じますね。カダカラール市は由緒ただしき街ですが、一歩表街道から逸れると、目も当てられないようなスラムが広がっていました。貧富の格差はもちろん誰しもが認識していた問題なのですが、誰も直視しようとはしなかった。どこかで『自分たちには関係のない事だ』と言った考えや、どんなに策を講じても『どうせ既得者が利権を守るばかりで、どうする事もできない』と言った諦念が街を占めていたように感じます。かく言う私も、その一人でした。恥ずかしい話、私は幼い頃からいじめを受け友だちもできず受験に失敗し失恋を重ね仕事すら見つからずとうとうこの間引きこもる家さえ燃えて無くなったんです。もうどうしようもないと途方に暮れていたところ、相談に乗ってくれたのが魔王さまだったんです。そして魔王さまは、実際に私の目の前で市を改革してみせた。それを見ていてもたってもいられなくなって、職員に応募したんです。嘆いているばかりじゃなくて、私も一歩でもこの街を良くするために行動して見ようと。あの時魔王さまが相談に乗ってくれなかったら、私は今頃ヤケになって野垂れ死んでいたかもしれません」



□魔王□


匿名希望名無しさん(年齢不詳)

出身:不明

職業:無職


「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………魔王」



□やっぱり魔王さまのライブは格別□


クラン・木下・ユアサさん(21)

出身:モードランド征服跡地

職業:魔物


「私、毎回毎回見に行ってるけど、やっぱり魔王さまのライブは格別なのよ。どこかどうって言われたら困るけど、ファンってそういうものじゃない? ちゃんと活動してくれるだけで嬉しいの。今年で隠居されるって聞いて、私ショックでしばらく寝込んじゃったんだけど、だからこそ最後は目一杯楽しむつもりよ。グッズもできる限り買い集めて、トモダチにも配るつもり。今からお小遣い貯めなくちゃ!」



□普段は静かで黙ってるんだけど□


松下アイアン悟史さん(542)

出身:シュバイニー町

職業:世界征服者(部品修理担当)


「とにかく僕たちにとっては征服が一番重きに置いてあるんで。それ以外の、例えばメンバー間の個人的な好みとかは二の次なんですよ。魔王さまの下に集まった、世界征服を企んでるメンバー全員が、『より良い征服にしよう』と思ってるはずです。でもだからこそ、お互い譲れなくなっちゃう時も多い。そんな時、いざこざや摩擦を真っ先に解消しようとするのが他ならぬ魔王さまなんですよね。彼からそう言われちゃったら、他のメンバーは納得するしかないじゃないですか(笑)。それが分かってるからこそ、普段は静かで黙ってるんだけど、いざこざやケンカになりそうだったらすぐ飛んでくる。そういうところが、僕が魔王さまの好きな部分なのかもしれません。征ェスにツアー、必ず成功させてみせますよ。チケットが取れなかった方も、今年は映魔館で初のライブビューイングをやろうと思ってるんで、みなさん楽しみに待っててください」




ーーこの日初めて、魔王さまは『忙しいから』と言う理由で取材に欠席した。取材班は『ノドカナ村』で小一時間待ちぼうけを食らった。何があったのかは分からないが、前々から組んでいた予定を崩してまでやらなければいけない用事でもできたのだろうか? そう言うわけで、今回は魔王さまをよく知る人物から彼の人となりについて取材したインタビュー記事をお届けする。

 いずれにせよ、次回はたっぷり『お礼』をしなければならないだろう。これはカレーライスどころでは済まないかもしれない。来週は魔王・リーンハルトさまの故郷から、彼の育った村の様子や彼の若い頃の恥ずかしい話など、幼馴染や家族にたっぷりと話を聞かせてもらう事にしよう。こうご期待あれ。

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