第1話 廻り続ける日々

「なるほど」

思わず口に出してしまった。吸血鬼の気持ちがわかったような気がした。引きもり生活も一年が経とうとしている。今日も今日とて日差しが強い…。

世の中には『思春期症候群』なるものがあるらしい。不安定な精神状態によって引き起こされる不思議現象とネットで噂されているが、大半が信じていないだろう。俺もその内の一人のはずだった。いつからだろう、他人の『心の声』が聴こえるようになったのは。いつものように電車通学してる時だったと思う。突然四方八方から周囲の声が大音量で響いてきた。思わず耳をふさいだが無駄だった。辺りを見渡しても見ない平然としている。まさか、聴こえているのは自分だけか?幻聴?意識が朦朧もうろうとする刹那、ふとネットで見た言葉が脳裏に浮かんだ-思春…期症候…群…。

目覚めると白い天井が見えた。

「ここは…病院か?」

あれ、どうして俺、確か学校に行く途中で…。その時病室のドアが開いて看護師さんらしき人が入って来た。

「あっ!目が覚めましたか?体の調子はどうですか、赤坂健太さん?」

それから看護師さんから自分が電車の中で倒れ、ここに運ばれたこと、特に異常が見られず人混みに酔ったのではないかということを告げられた。

「では私はそろそろ行きますので何かあったら呼んでくださいね」

「はい、ありがとうございます」

しかし俺はこの時既にあるとんでもない症状を引き起こしていることを確信してしまった。だって彼女の、〈人混みに酔っただけで倒れないでほしいわ。仕事が増えていい迷惑よ〉というが聴こえてしまったんだから。

以来俺は人混みを避けるようになった。学校も休むようになった。やがて買い物に行く気も無くなり、今の生活が続いている。当然親にのことを相談したが相手にしてもらえず、彼らの聞きたくない内面が聴こえてきて余計に辛くなった。そうして俺は自分の世界に閉じこもっていった。


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