第9話 おおぐまちゃん、弟子を育てる

【作者よりお知らせ】

おおぐまちゃんとこぐまちゃんの住む国は『クマランド』という国名となりました。

行き当たりばったりで書いているため、いまごろ国名を決めなければならないと気づきました。ご容赦ください。              瀬賀部 普


いつもクマランドを探し回ったかいがあって、新しくわかったことがあった。こぐまちゃんと一緒にいたくまは父親ではなかったようだ。こぐまちゃんがグレイスハウスに入所したとき働いていた元職員のくまが見つかり、話をきくことができた。こぐまちゃんをグレイスハウスに連れてきた男性は『くまお』といい、こぐまちゃんは同じ船の仲間『くまぞう』の娘だといったそうだ。くまぞう達は外国向けの貨物船の乗組員だった。船の中で事故が起こり重症を負ってしまい、貨物を降ろした先の国『クマロニア』でそのまま入院したという。クマランドの港にこぐまちゃんの母親『くまみ』と住んでいたが、以前から悪かった病気がもとで亡くなったそうである。くまお家族とくまぞう家族は中がよく、くまみが入院したときこぐまちゃんを預かっていた。しかしくまおは職場が異動となり別の港に移らねばならなくなった。こぐまちゃんを連れていくか、施設に預けるか悩んだ。くまおは家族が多く、やむをえずグレイスハウスに預けることにした。施設を決めるにあたり、くまおは仲間の娘を一番暖かく育てくれるに違いないと感じグレイスハウスを選んだという。


くまぞうが入院したクマロニアの病院がわかり、国際電話をしてみた。ずいぶん長期に入院しているが状態は悪く、早く会いに来てやってしほしいとのことである。ただクマランドとクマロニアは漁場のナワバリがもとで度々争いが生じ、貿易がストップすることがあった。運悪く今はその時期にあり、渡航申請しても許可が出ない可能性が高い。それでも諦めることはできないので申請を出すことにした。おおぐまちゃんの勤めている店のオーナーに事情を話したところ、快く承諾してくれた。しかしクマロニアに行くこととなれば10日ほど店を空けなくてはならない。オーナーやお客に申し訳がないので若手のくまたろうを特訓し、代理シェフにすることになった。


「くまたろう、すまん。」

「いえいえ、他でもないこぐまちゃんのためです。それにシェフの技を学べるチャンスですから厳しく仕込んでください!」

翌日からくまたろうの特訓が始まった。おおぐまちゃんは一からくまたろうを細かく指導した。味付けや火の通し加減はもちろん、野菜の切り方、魚のさばき方、盛り付け方や誰にも教えたことがない秘密の隠し味まで。くまたろうも必死で食らいついてきた。

「くまたろう、ありがとう。がんばってね。」

くまたろうの一生懸命な姿を見てこぐまちゃんがねぎらった。


申請を出して2ヶ月、なんとか渡航許可がおりた。くまたろうはぐんぐん腕前をあげ、オーナーも納得の料理くまとなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る