第41話 もう1人の異世界転生者

「なぜ恋人になれなかったか? 先約がいたからだ。先に異世界転生していたやつがいたんだ」

健一人魂様は静かに言った。


「そいつはまさか……」

智之さんは驚いていた。


「そうだ。橘権太……つまり坂田真太郎が異世界転生してたんだ」

えー!僕が?記憶にないけど!


~転生部屋~

ワシは転魂部屋にひとりの男を呼び寄せた。

そやつの名は『坂田真太郎』

わしが降臨すると驚いておった。


「うわ! 」


「坂田真太郎だな? 」

坂田真太郎はわしの姿を見るとさらに驚いていた。


「坂田真太郎でございます。あなたは? 」

坂田真太郎は警戒していた

「私は転生神 人魂だ。」

ワシはいつものお決まりのセリフを言った。


「わたしくは死んでしまったのですね。ここはどこですか? 」


「さよう。おまえは愛するものを助けようとして死んだのだ。ここは天国でも地獄でもない選ばれし者だけが来ることが出来る転魂部屋である」

坂田真太郎はやっと信用したようだ。


「やっと信用したようだな。本題に入ろう。坂田真太郎。おまえは選ばれたのだ」

ワシは淡々と坂田真太朗に告げた。


「坂田真太郎。君が自己犠牲してまで愛する人を助けた行為は、我々を感動させてくれた。よって、転生先、能力、願いを選択する権利を与える。希望はあるか?」

ワシは宙に浮きながら言った。


「初恋の人を探してくれませんか? そしてどんな事があっても、夫婦めおとになりたいです」

坂田真太郎はそう叫ぶとワシはしばらく考えた。


「本当にそれだけでいいのか!?」

ワシは驚いていた。


「な、なぜですか? 」

坂田真太郎も驚いていた。


「お金持ちになったり、ハーレムを作れたり、異世界で冒険できたり、チート能力を持って俺TUEEEEつえーとか出来るんだぞ? 」


「わたくしの願いはひとつだけです」

坂田真太郎の心は変わらないようだ。


「謙虚なやつだ。気に入った! その願い叶えよう……!

実は柊愛長ひいらぎつぐながは先に異世界に転生しておる。そこに坂田真太郎と雲母きららに転生してもらう。柊愛長は最強の協力者になるだろう。そして来たるべき時が来るまで坂田真太郎の記憶を封印しておく」


「なぜ記憶を封印するのですか? 」


「雲母の方は普通に転生する。お互いわからないまま出会った方が面白い……いやいや不自然じゃないだろう」


わしが人の恋愛見るのが楽しみとは言えんな。


「転生してもらう西暦は1988年だ。」

ワシが緑色に光りだす。


「いでよ!異時間の書コンカーツよ! 」

ワシは異時間の書コンカーツを出した。


「坂田真太郎は橘権太として生まれ変わるのだ……! 」

ワシが眩しく光った。


ちなみにワシの状態は、本が開いた状態じゃ。



「異時間の書コンカーツの1988ページを開け」

坂田真太郎は、そのページを開いた。

すると、光に包まれ坂田真太郎は消えた。


~回想終わり~


健一(人魂様)は語り終えたようだ。


「こんなにお膳立てしたのになかなか恋人にならないことに驚いたよ」

健一は少し呆れているようだ。


「僕は……異世界転生者だったのか」

最初に病院で聞いた『初恋の人を探して』の声は僕の記憶だったのか。


「私より坂田真太郎が先に……だから無理だったのか……」

智之さんは愕然としていた。


「小豆沢智之。異世界転生法30条チート能力を悪用してはならないを、違反したことにより、罰する。魂の消去だ」


異世界転生法なんかあるのか……!


知らなかった。


魂の消去とは罰がきついな。

「待って下さい! 消去だけは勘弁してください……! 」


笹野さんが健一の前に立った。


「しかし……」

健一は困っている。


「蔵子! 仕方ないんだ! 」

智之さんはもう覚悟を決めたようだ。


「こんなことになりましたが、私の大好きな兄なんです」

笹野さんは涙をこぼした。


さっきは笹野さんは『兄などいない』と言ったけど、やっぱり心の中では辛かったんだな


「智之さん。笹野さん…いや蔵子さんと家族として両思いだったんじゃないですか?」

僕は智之さんに必死に言った。


「そうか……両思いだったのか」

智之さんの顔がになった気がする。


「仕方ないな。動物に転生でいいか? これ以上は無理だぞ」

健一はため息をついた。


「ありがとうございます」

健一は『神』と書かれた本を開いた。

青白い光が出て智之さんに当たり、足元から消えていく。


「蔵子を幸せにしろよ! 」

智之さんはそう言って消えていった。


「うぅ……兄さん」

笹野さんは泣いている。僕はそっと笹野さんの肩を寄せた。


「ふう。やっと終わったな。」

健一が本を開いてその場でぐるりと回った。


青い光が倒れているみんなを包み込んでいた。


「ワシは帰るぞ。他の奴にはワシが神ということは内緒だぞ」


「ありがとう。わかったよ!健一……いや人魂様」

僕がそういうと健一は微笑んだ。


「ありがとうございました!」

笹野さんはもう下がらないだろうと言うくらい頭を下げた。


「健一でいいよ。じゃあな」

健一は帰って行った。


「権太!大丈夫か?」

権蔵が駆け寄ってきた。


「ああ、人魂様が助けてくれたよ」

他のみんなも目を覚まし始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る