第12話 天沢 智と霊媒師!

さとるとTOINで連絡して今日飲みに行くことになった。

「連絡ありがとう」

智がニコニコと言う。


「いや同窓会の時に飲みに行こうって言ってたからさ! 」

僕達は世間話をして近況を話した。


「今はスーパーの店長をやってるんだ」

智はニコニコとしている。


「すごいな。僕なんて14年働いて中小企業の総務の平社員のままだよ」

僕が褒めると智は照れている。


「実はさ……」

僕がいよいよ本題を切り出そうとした時に後ろから声をかけられた。

「橘さん? 」

後ろから僕に声をかけたのは小豆沢光あずさわひかりさんだった。


「小豆沢光さん? どうしてここに? 」

僕は驚いて口をぽかんと開けていた。


「忘れ物があるからってお店に呼び出されたんだよ」


「お知り合いですか?良かったら御一緒に」

智が光さんを誘う。


「そうじゃ。光殿ここにおいで」

権蔵はだだをこねる。


「仕方ないですね!ご一緒します」

光さんは同席した。


「それで権太何か言いたかったの?」

智が僕に言った。

うーん。光さんがいるから言いづらいなあ。

光さんは親戚だから知っててもいいかもしれない。


「実は蔵子くらこさんが高校時代に誰かに脅されていたらしいんだ。智、何か心当たりはないか……? 」


「「!!!!」」

2人はすごく驚いていた


「蔵子ちゃん……脅されていたの? 」

光さんは真剣な目で僕を見た。


「そんな……小豆沢さん可哀想……」

智はぶつぶつ呟いた。


「心当たりか……権太くんと遊びに行った時に誰か尾行していたよ。パンチパーマで茶色の服を着てグラサンをかけたいかにも、探偵風の男だった。」

智がコソコソと僕に言った。


僕は『僕達を尾行していた探偵風の男』をメモした。

「そいつが犯人ね」

光さんが怒っている。


「智は正直高校時代に蔵子さんのことどう思っていた? 」

僕はいつも通りの質問をした。


「そりゃあ。好きだったよ! 見てるだけで幸せだった」

智は照れながら言った。

あんだけ身近にいれば好きにもなるよな。


「そうか。今度聖川ひじりかわ先輩にも話を聞きたいんだけど……智は聖川先輩と仲良かったよな? 協力してくれないか?」


「わかった! なんでも言ってよ! 僕協力するから」

智が二つ返事で了解してくれた。

また味方が増えたな。


~帰り道~

「あっ橘さん」

光さんが駆け寄ってきた。


「霊媒師さんとコンタクト取れました。来週はどうですか?」

光さんがスマホのカレンダーを見せながら言った。


「はい。行きます」

僕は即答した。


「いよいよはこべと会えるのか?楽しみじゃのう。」

権蔵はニコニコとしている。


「権蔵! 智のこと何かわかったか? 」

「特に何も隠してないのう。」

権蔵は即答した……。


~そして来週になった~

『ゴーストスリーパーず』と書かれた看板のある木造2階建てのお店だ。

中に入ると暗幕カーテンがしてあり電気も薄暗い。

棚には蛇や蛙のホルマリン漬けや黒焼きのヤモリが置いてある。

本棚には『黒魔術のやり方』など怪しげな本が置いてある。

本当にここで大丈夫なのかな……


「いらっしゃい」

黒いローブを着た60歳ぐらいの女性が奥から出てきた。


「予約してた小豆沢です!」

小豆沢さんはここに慣れているようだ。


「……皆さんこちらの部屋へ……いらっしゃい」

僕達は奥の部屋に案内され、座布団に座らされた。


「お話しは聞いてますよ……小豆沢さんの前世から『はこべ』という人を呼び出せばいいのですね」

霊媒師さんが薬草を煎じたお茶を出してくれた。

おいしくない……


「いよいよはこべと会えるのか?」

権蔵が霊媒師に質問した。


「皆さん。お茶をどうぞ」

霊媒師が僕達にお茶を勧める。


「おい! 霊媒師殿! 無視するな!」

権蔵が霊媒師の耳元で大声で言った。


「必要な道具と薬草を取ってきます。しばしお待ちを……」

霊媒師はどこかへ行った。


「小豆沢さん大丈夫ですか? あの霊媒師さん権蔵のこと見えてませんよ」

僕が光さんにヒソヒソと言った。


「大丈夫ですよ! 実績がありますから」

光さんはそう言うがやはり不安だ。


霊媒師が薬草と道具を持ち、戻ってきた。

「では始めます。小豆沢さんこの薬草を飲んでください」

霊媒師がさっきより不味そうな薬草茶を光さんに渡す。

その薬草茶を光さんは一気飲みした。

そして霊媒師は水晶がついた杖を振りながら、何やらぶつぶつと唱える。


「あまかなやさはちまらさしあはさはにたまなかたまあならさら…いでよ!はこべ!」

すると、光さんが意識を失った。


「光殿! 大丈夫か? 」

光さんはその声で目を覚ました。


「あ、愛長様…?!お懐かしゅうございます!」

光さんはいつもと様子が違うようだ。


「は、はこべか?」

権蔵は震えている。


「はい、はこべでございます!」

はこべさん光さんがそう言うと権蔵が涙を流す。

「はこべ!わしが死んだあとお主は大丈夫だったのか?」


「愛長様亡き後無事に逃げ、私は寺子屋を創設致しました」


ま、まさかその寺子屋とは……


「寺子屋ひいらぎと申しました」

はこべさんはそう続けた。

やっぱりひいらぎ高校の前身だ。


「なんと……そなたが作った学校だったのか……」

権蔵も驚いている……。


「どうして……どうして……私なんかを庇われたのですか! せっかく私が裏切り者の振りをして参謀者を捕まえるつもりでしたのに! 死なれてはなんの意味はないではないですか! 」

そうか……はこべさんも権蔵を守るために裏切り者の振りをしていたのか……!?


「やっぱりはこべは裏切り者ではなかったな。ワシの予想通りじゃ。はこべは、そんなことができる女ではない」

権蔵はさらに涙を流した。

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