第26話 ガゼイラ建国記:2

 レイはこの1冊しかない書籍の序盤の革新部分を読み進める……

 ……

 ……


 ユーライ他500人が人間の集落に入っていく……

 もう見つかっても構わない……

 500人の大所帯だ……

 どうせ直ぐにバレる……

 だから一直線に学校に向かう……


 事前にユーライは以下の指示を出していた。

「暫くすれば、子供達の遊びも終わる、教室に戻れば我等の行動開始……先ず教室の出入口を塞げ、窓もだ、そして教師を捕まえよ、抵抗する者は容赦なく叩き伏せろ、しかし生かしておけ……そして3階の教室に集め、手足を子供達の勉強椅子に括りつけよ、互いに協力出来ぬ様にな、椅子同士は1.5mは離しておけ、教師の数は知れている、30名程度だろう、手練れのそなた達なら10名もいれば間に合う筈だ……」ユーライは同胞に指を差し、教師の確保と見張りを指示する、そして連絡用の魔石を渡す。

 そしてユーライは続ける。


「そして残りは子供の確保だが、全員確保出来なくとも良い、逃げる子供を無理に確保しようとして危険を犯すな……学校に通う子供は1000人程度、ならば3分の1、300人程度確保出来れば重畳、出来れば、1階の子を重点的に確保する」同胞達は何処を根拠にそんな数字が出るのか驚嘆しながらも、ユーライの発言に従う……信頼出来るからだ……ユーライならば……


 学校へ走る500人……


 既に、家に居る人間が怪訝な表情で見ている。

 指を差して、人間同士で話し合っている。

 人間が本格的に動き出す前に……


 まさか亜人種が走っているとは思っていまい、声を掛けてくる人間も居る……

 服装の粗末さに呼び止めようとする人間……

 どうでも良い……

 もう与えられた使命を実行するのみ……

 ザワザワと人声が聴こえる……

「なんだ、あれ、」

「走るなよ、砂埃が立つ」

「喧しいな……」

「気持ち悪い、なんなの……」

「捕まえろよ、憲兵ども」 

 様々な声……

 全て無視……

 ....

「おい!お前ら!!!」憲兵の声が聞こえ、足音が聴こえる。

 武装した、憲兵が近寄ってくる。

 同胞から若く長身の1名が憲兵に向かう。

 浅黒い肌と、彫りの深い顔で憲兵を見る。

 他の同胞は、そのまま学校へ。


 憲兵に相対する若い彼の歩行スピードが上がる。

 歩き~ジョギング~走り……

「なんだ!お前ら!!!」憲兵は絶叫して少し後退り、自身の背中に民家の壁を感じて踏み留まる....鞘から片手剣を抜こうと、柄を握る....

『....遅っ....』彼は思う....

 剣を鞘から抜ききる前に彼は憲兵の柄を右手で触る....

 彼は鞘から抜くのを止めるのかと思いきや....

 憲兵と一緒になって鞘から剣を抜く....

 と同時に、左手で鞘の先端付近を持ち....

 自身に引いた....

 鞘が直立する....


 ....この状況で鞘から剣を抜こうとすればどうなるか判るだろうか....


 剣をほとんど真上に抜く事になる....

 その様な角度で剣を握れるか試して欲しい....

 事実、憲兵の手首は剣で自身の胸に押さえつけられ、柄を握ってはいない....

 そして彼は剣を抜ききる....

 その真上に有ったのは憲兵の顎だった....


「ゴギッ....」柄の尻が顎に食い込んだ音....


 書けば長いが、一瞬の仕業....


 顎が、割れた様だ....若い彼には手応えが有った....

 そして手首も痛めた筈....しかしこちらは軽傷....筋を痛めた程度か....そのまま憲兵の首を剣で切り裂いても良かったが、彼はそうしなかった。

 憲兵は顎の痛みで悶絶中....

 彼はグラグラの下顎に手を掛ける....

 ぶるぶる首を降って懇願する憲兵....

 引く....「ガゴンッ」顎が外れた....憲兵は失神していた....


 汚い手拭いで猿轡を噛ませる....頭の後で結び....顎の痛みでそうそう外せまい....


 ちょうど良いサイズの側溝を見つける....

 彼は憲兵を側溝に転がし入れた....「ゴロン」....側溝内に横たわる憲兵....もう覗き込まないと姿は見えない。


 ....振り返り....499名の後を追いかける....

 ....豹の如き疾走....

 ....直ぐに追い付く....

 ....


 既に同胞殆どが学校の裏庭に着いていた。

 学校は、非常に巨大だった....

 確かに1000人の子供を収容するだけの事はある....

 3階建で1つの階層に8つの教室....

 そして校庭から教室への、2階には教師達の職員室。


 ■学校 平面図


       ~ 校庭 ~


 ____________________|-----|____________________

 |ーー|ーー|ーー|ーー|__|ーー|ーー|ーー|ーー|

| 2| 2| 2| 2|階 | 1| 1| 1| 1| 1F

 |_A|_B|_C|_D|段_|_A|_B|_C|_D|

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       ~ 裏庭 ~     ユーライ軍


 _____________________________________________

 |ーー|ーー|ーー|ーー|職員|ーー|ーー|ーー|ーー|

| 4| 4| 4| 4|階 | 3| 3| 3| 3| 2F

 |_A|_B|_C|_D|段_|_A|_B|_C|_D|

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 _____________________________________________

 |ーー|ーー|ーー|ーー|物置|ーー|ーー|ーー|ーー|

| 6| 6| 6| 6|階 | 5| 5| 5| 5| 3F

 |_A|_B|_C|_D|段_|_A|_B|_C|_D|

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 1000人、24組....1組当たり40名程度か....


 時間は2時を過ぎようとしている....

 子供達が名残惜しそうに、ボールを片付けて教室に戻る....


 好機だった....教室に入ればそのまま子供達を確保できた....


 子供達全てがが教室に入った事を確認して、ユーライを心酔する500人全員が雪崩れ込む....









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