第20話「対コネクトアイズ」

「最後に、もう一度確認しておく」


と、対大剣使いチームのリーダー、カルマは小さく呟いた。

現在、彼らは大剣使いの潜む住宅地から100メートル程離れた場所にある、所々崩れ落ちたボロボロの廃墟に身を隠している。


「まず、後衛チームの奴らが大剣使いの住処を襲撃。奴を引き付け、そこで前衛チームが迎え撃つ。素早く倒す必要がある。他のコネクトアイズのメンバーと合流されちゃ面倒だからな。以上!」


「はいはい!住民の配慮とかなしでそのまま大剣使いの家潰しちゃいましょうよ!」


「それはダメだ」


カルマの間に入り、軽々しく住民の死を宣告する参加者に、優は嫌悪の目線と共に言い放った。


「ちっ、別にいいじゃねぇかよ、少しくらい」


同じチームを組んでいるとはいえ、所詮は人を何人も殺してきた戦争参加者ばかりだ。慈悲なんてものはない。どちらにせよ、戦争不参加者の住民を巻き込むわけにはいかない。



作戦はカルマの言った通りだ。

銃や弓を装備した後衛チームが大剣使いを奇襲。

そのまま戦いやすい平原へと引き付け、前衛チームと、サポートの後衛チームで奴を倒す。いや……正確には殺す。


ただし、他メンバーとの距離は僅か400メートル程。合流されては面倒なことになるが、逆に考えれば、自分たちの標的を早く片付けば、他チームの支援に行くことも、来てもらうこともできる。

作戦通りに進めば、対コネクトアイズの勝利は確定だ。



「いよいよだね。優君」

「頑張りましょう!」


隣には相原、彩乃。

優は力強く頷く。


「うん」



いよいよ作戦が始まる。

各地に散らばった他チームにも緊張が走る……


「さあ、作戦開始だ!」


コネクトアイズのリーダー、軍服の覇剣と戦う対軍服の覇権チームのリーダー、レインは、一呼吸置き、力強く言った。


作戦が開始された。



7つのチームが、一斉にコネクトアイズに攻撃を仕掛ける。


の……はずが……



ドゴン!ドゴンッ!ブツッ!


「なっ!?」

「銃撃!?」


優たちは何者かに銃撃を受けた。

2人撃たれた。


誰かは分からない。どこから飛んで来ているかも分からない。素早く瓦礫に身を隠す一同。


「おい!誰だ!」


カルマが焦りに焦った面立ちで叫ぶ。


「邪魔か?!」

「いや待てよ……コネクトアイズに銃使う奴いたよな?!」

「まさか……作戦が漏れた……?」


チームのメンバーが事態に困惑しだした刹那、先頭にいたメンバーは瓦礫と共に真っ二つにされた。


ズバァン!!……


「!?」


優は目を疑った。

実際、大剣使いを見るのは今回が初めてで、まさか、まさか自分より2倍近くの身長のある大男だとは思いもしなかった。

今、それは優たちの目の前にいる。

2本の大剣の内、1本を両手で支えている。

あの一振りで、手前側にいた3人を殺したのだ。


「フゥ……まさか本当にいるとはな」


大剣使いは、その大きな大剣を豪快に振り回した後、肩に保持して悠々と言った。


「い、いくぞぉっ!ウェェェェェェェイッ!」


それでも大剣使いに立ち向かおうと剣を握ったカルマの頭を銃弾が貫く。


「なっ!……」


銃弾が飛んで来た方にある森の崖から、人影が見えた。

コネクトアイズのメンバー、「刹那の弾丸・ミサキ」だった。決して標的を逃さず、一瞬にして血に染めるという女銃士。

ここから400メートル離れた場所で、他チームが戦うはずだった相手だ。


「先にこっちを潰しに来たってわけね……」


相原は唇を噛む。


これで6人死んだ。残るは15人。その内まともな戦闘ができるのは優と彩乃くらいだ。

つまり、絶望的な状況である。


「さて、殺すか。まだ向こうに1チームいるみたいだしな!」


大剣使いが両手で握った大剣を大きく振り上げ、振り下ろした。


皆が死を覚悟したその時。


ギュィィィン!!


激しい轟音が廃墟に響き渡った。

優が、大剣使いの一撃を真下から夜那で防いだのである。


「まだ負けてない!!」



「はぁぁぁっ!!」


積まれた瓦礫を走り渡りながら、彩乃が大剣使いに剣を連続で突き立てる。大剣使いは防御姿勢に入り、夜那から離した大剣を盾のようにして、彩乃の攻撃を受け流す。


優はそれを逃さない。

彩乃に気を取られている大剣使いの隙を突き、後ろから回り込んだ優は、大きく夜那を横に一直線に振り、大剣使いの横腹を裂いた。


「なっ!?」


出血を抑える大剣使い。3人を一瞬で殺した大剣使いの膝を、地面に落とさせたのだ。

しかし、慢心仕切った優目掛けて、再び銃弾が飛んで来た。


カキィン!!


「よいしょっ!」


相原が優の前衛に素早く現れ、剣で銃弾を弾く。



刹那の弾丸・ミサキは舌打ちをし、すぐさま弾を込め直す。




優は相原に頷くと、後ろを振り返り、皆に叫んだ。


「まだ戦える!後衛チームは刹那の弾丸を頼む!前衛チームで大剣使いを倒す!」


優と彩乃の圧倒的な力を見た他のメンバーには、闘志が芽生えていた。


「よっしゃぁっ!」

「後衛チームは俺について来い!」

「は?ふざけんなよ!俺について来いよ!」



腹部の出血をなんとか抑え、立ち上がる大剣使い。背中に背負っていたもう一歩の大剣を引き抜いた。

「まさか2本目を使わせるなんてなぁ……へへっ、久々に面白そうだ」



殺意を露わにする大剣使いに、優たちは再び剣を構える。


「いくぞっ!」






一方。その頃。


レインを含む対軍服の覇剣チームは、レインを除いて全滅していた。

燃え上がる炎の中、1人レインは立っている。


「ちっ……やっぱあんた、強えな」


能力を使い、無数の剣を宙に浮かせ、レインを威嚇する軍服の覇剣。名の通り、軍服に身を包んだ水色髪の少女だった。

瞳は他のメンバーと違い純粋な碧眼ではなく、少し赤が混じっているようにも伺える。


「私は強くない。君たちが弱いんだよ」


「どうやって作戦に気付いた?俺と脈のある奴にしか話は通ってなかったと思うんだが……」


「幸運なことに、アブソルートキルに知り合いがいてね」


「そっか……残念だ。だが、やることは変わらない。3年前の仮り、返す!」


レインは落ちていた剣を足で拾い上げる。更にその剣に炎を纏わせ、軍服の覇剣へと全速力で足を動かした。


「君では私に勝てないということを……また教えるべきかなぁっ!!」


軍服の覇剣は目を見開き、手を大きく広げ、宙に舞った剣をレインへと射出した。


ギュィィィィィン!!


コネクトアイズと、優たち対コネクトアイズ。

勝つのは……どちらだ。


ーENDー

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