『actors〜有栖川妖狐奇譚〜』by Darsan

『さぁ、始めよう。楽しい楽しい剣撃の極地【剣撃剣舞】の世界へ』


〜あらすじ〜


妖狐は妖怪狐の血を継いでいて、九つの内包能力を持っています。「妖狐=アリス」

現代、日本の中部岐阜県を中心に物語が始まる舞台は那騎袖市、自然が都市を彩り街に活気がある。少し田舎臭いが、人の温かみを感じる街である。

そして、もう一つの世界「幻妖界」、ここは妖怪、幻獣、神等が住むもう一つの世界。

この世界は特殊能力のことを「act(アクト)」と呼び、能力者を「actor(アクター)」と呼ぶ。半妖、サイキッカー、超能力者等を指す言葉である。

actの種類は全部で六つあり

「自然、科学系のネイチャー

 植物、動物のバイオ

 強化、補助のエイド

 操作、召喚のコンタクト

 造形のメイク

 不明のアンノウン     」

稀に二つ以上持つactorもいる。

actの種類をaccept(アクセプト)と言う。


______________________


〜第一話〜


 ――力とは誰しも持っているもので「才能としての力」「物理などのエネルギーの力」「目には見えない超常的な力」「者達が起こす霊的な力」と、その力は多種多様だ。そして、この物語はその力が能力として認識されるようになった、そんなとある時代の、【九尾の狐の血】を引き受け継ぐ一人の少女のお話――


____________________


 ある年の7月、日本中の新聞の学生スポーツ欄にこんな記事が掲載されていた。


「田舎中学の少女、雑草魂を見せ日本一の栄冠へ! 」


 この記事が様々な評判を食らった。


___ノーシードの選手が優勝候補をバッタバタ薙ぎ倒すなんて下克上、ワクワクする!


___確かにすごいが、雑草って表現は差別的ではないのか?


 そして、その話題を引き起こした少女の名前は――まぁ、アリスとでも言っておこう。もちろん当の本人はそんな騒動もいざ知らずであった。


*****


 そして翌年の春、アリスは地元の『那騎袖なぎそで高校』に入学した。この高校は能力者改め「actor」の研究をしつつ勉強ができるのがここの魅力である。

 そんな高校に入学した少女が一人、名前は「有栖川妖狐ありすがわようこ」。小学校の頃から友達には「アリス」と呼ばれている。



「やっと着いた〜。長い坂を上るのキツかった……死ぬかと思ったよ……」



 驚くほどの急勾配を登りきった妖狐は腰に届くまでに伸びた髪の毛を風に靡かせていた。


アリスの髪は綺麗なきつね色をしていたが毛先3分の1はくっきり境界線が見えるくらいはっきりと白になっていて本物の狐を思わせられる。

また、揉み上げも毛の半分は黒く、正面から見ると髪がくせ毛のように、横にピョコンっとはねている。瞳は深紅色のクリっとした目で、act使用時には向日葵のような黄色の瞳になる。


「ん?あの姿はどこかで見覚えが、先輩がよく連れていて……あぁ、歳を取ると物忘れが酷くなる……。」


 するとポニーテールの金髪の教師っぽい女性がなにやらアリスの事を知っているらしくゆっくり近づいてきた。それにアリスも気づいたらしくサッとその人へと体を向けた。


「あっ、あの人かな?お母さんが言ってた人って」


「「えーっと」」


「あなたが」

「確か名前は」


「稲瀬……稲瀬荷穂いなせ かほさんですね」

「妖狐、だったかな」


 と、二人同時に話してしまったが一応は聞き取れた。だが、その後はどっちから話し掛ければいいのか考えていたとき、


「おはようございます先生!」


 と一人の生徒が稲瀬に元気よく声を掛けてきたので取り敢えず「おはよう」と愛想よく返すと再びアリスをしっかりと見据えた。


「確かに私は稲瀬荷穂だ。もう一度聞くが先輩……、いや、有栖川襟狐ありすがわ えりこの娘、有栖川妖狐でいいんだな?」


「はい……でもなぜにフルネームなのですか、先生?」


「それは、これから先、辛く楽しい学生生活を送ることへ私なりの応援でもあり、皮肉でもある。テストや行事は色々と気を付けろよ、妖狐……いや、アリス。まぁ、お前さんなら出来てしまう気もするがな。では、入学式でまた会おう」


そう言い切ると荷穂はアリスを置いて校舎の方へと戻っていった。


*******


 長ったらしい入学式が終わると次はいよいよ、期待と不安が揉みくちゃになるクラス割り当て表確認をやった。アリスも人波を押し退けてなんとか覗くと1ーCに割り当てられいることがわかった。


「あれ……私、一人かな? 知ってる人は___っと龍成たつなりがいた、みっちゃんはBでぬえちゃんはAか、良かった〜知ってる人がいて」


 と、一人でホッとしていると後ろから「アリス」と呼ぶ声がしたので、振り返ると青く長い髪に貝をあしらったピン止めをしている少女が立っていた。


「あ、天羅ちゃん、今年は同じクラスだし一緒に頑張ろうね」


「そうだなアリス、でも今年のテストはお前さんに負けないからな」


 声の主は「貝塚天羅かいづか てんら」、アリスとは中学以来の友達である。そして、回転に関するactorである。


 今日は、クラスの皆んなとの初の顔合わせと担任の紹介があり1ーCの担任は偶然か稲瀬荷穂であった。そして、放課後になりアリス、龍成、鵺、そして、みっちゃんこと密狸みつりの四人はアリスのバイト先の喫茶店「アメイズ」で休んでいた。


「妖狐、今日は早いね、そう言えば入学式って言ってたけ?あと、三人とも早く注文しないと追い出しちゃうよ〜」


 笑顔で急かしている黒髪ロングヘアーのストレートの女性はこの喫茶店「アメイズ」の店主、導狐みちこだ。

アリスにとって姉のような存在の人物である。


アリスを除いた三人はその言葉が本当にそうすることを知っていたので、龍成と密狸、鵺はそれぞれ注文を頼んだ。


「俺、ストロベリーパフェとウインナーコーヒーで」


「私は抹茶サンデーにローズティーで」


「密狸と同じで」


「は〜い、少し待っててね〜」


*****


それから10分ほどしてアリスが3人の注文した物を両手の2つのトレイに乗っけて巧みなバランスで運んでいった。


「相変わらず器用だな」


「どーも、龍成。皆んなもゆっくりしていってね」


全員の注文した物をそれぞれの前に置くと、アリスは可愛らしい笑みを零しながらお辞儀をして店の奥へと入っていった。


それを見送ると早速、龍成はイチゴがこれでもかと乗せられたストロベリーパフェにスプーンを突っ込むとイチゴとクリームを引っ張り出し、同時に口の中へと運んだ。

酸っぱさが抑えられた分、いちごの甘さやみずみずしさがより一層引き立っている。さらにそこにほんのり甘いクリームが混ざることでなんとも言えない相乗効果を生み出す。


龍成は矢継ぎ早にウインナーコーヒーの容器にも手をつける。名前だけ見ると、ウインナーがコーヒーの中に入ってるのか? と思うかもしれない。

しかし、実際にはコーヒーの上に泡立てられた生クリームが山盛りに乗せられたものがウインナーコーヒーと言うものである。

これを見れば誰でも混ぜたくなるかもしれないが龍成はそうはしない。以前それをして容器からコーヒーが溢れ出し、その熱さで思わず床に落として割ってしまい高い弁償代を喰らった経験があるからだ。

慎重に持ち上げると生クリームを少し吸い込みながらコーヒーを啜る。若干深煎りされているようで苦味が強いが、前もって入れられていたコーヒーシュガーや生クリームの甘さが上手く中和してくれてとても飲みやすい。


「……美味いな」


龍成もそう言わざるを得ないほどこの店のメニューは美味しいのだ。


何となくその様子をじっと見ていた鵺と密狸も自分達の抹茶サンデーを食べることにし、スプーンを手に取った。

有名な宇◯抹茶がアイスや一番底に眠っているゼリー、抹茶クリーム、さらには直接粉末としてもふんだんに使われている。さらに、1番上にはアイスに加え白玉まで乗せられ、茹でられた小豆やマスカルポーネ(チーズの一種)クリームが層の一つとなっている豪勢なものだった。

2人ともまずは抹茶のアイスを少し掬ってパクリと頬張った。

ひんやりした感触と共に濃い甘さがサッと広がったかと思えばすぐに抹茶特有の苦さが口の中で燻る。それが、また抹茶好きにはたまらないのだ。その感覚が消えないうちに鵺は白玉の一つを抹茶クリームや普通のクリームと共にそっとスプーンに掬い口の中に放り込んだ。モチモチとしつつもそわっとする冷たさが体中に染み込む。


何度来ても本当に飽きない味だった。3人ともじっくり味わいながらカフェの中でゆっくりと寛いでいるのであった。


___________________



 ____それから数日後


学校にある噂が広まっていた。内容はよく分からないが「ひとりかくれんぼ」と言うものらしい。


「妖狐、悪いが、ブラッド=エレーナ=みさお=ハーヴェストが来てないから配布物を家に運んでくれないか?住所は分かるだろう」


「いいですよ。今日は先生も会議で行けないのですよね」


操(みさお)とはアリスがまだ入学して3日目の時、アリスが道を尋ねたことをきっかけに一気に仲良くなった子である。


「そう言うことだ。頼んだぞアリス」


 そう荷穂に頼まれたアリスは操の家に向かったが、着いた時、奇妙な感覚に襲われた。アリスはもらった物を靴棚の上に置くとその場の奇妙な光景に目を見張った。

動かない人形が刃物を持ち歩いて徘徊し、その後ろを少女___操が尾行しているのだ。

「操ちゃん」とアリスが小声で言うと、その声に反応した人形がゆっくりと近づいて来る。


(……あの人形、いや憑依しているアレはどれぐらいの強さだろう、調べる必要がありそうかな)


「我が呼び声に応えよ『妖刀・血漆ちうるし』!今こそ顕現せりて我が力となれ!」


 そう言うとどこからともなく焔の模様を鞘、柄に拵えた一振りの刀が目の前に現れ、鞘を右手でしっかりと握った。


「ミィツケタァ……」


「っ! 」


「やれやれ、今の宿主は何を考えているのやら……」


 そう言った雰囲気の違う操は狂った人形の攻撃をかわすとアリスの方にやって来た。


「お前さんが『操』の言った例の狐だな。まぁ今はじっくり話している余裕はない、さっさと呪われた人形を片付けないとな」


「……あなた操ちゃんじゃないよね。雰囲気がまるで違う。……あなた誰? 」


「そう言うば『この魂』こと『マリーブラッド=ラグナス=ハーヴェスト』とは会っていなかったわね。私のことはマリーかラグナスでいいわよ」


「……『ハーヴェスト卿』ですね」


「……何故それを知っている狐」


ぎろりと操に取り付いているハーヴェスト卿がアリスを睨むも何食わぬ顔でじっと見ていた。


「それは、私の先祖様が噂を聞いてきますから」


「……そうか、では呪われた人形の処理を任せよう」


「それはそうですが操ちゃんの魂をこっち(肉体)に戻して下さいね。一応やるし何より大事な『友達』なので」


「っ!……ぐっ」


その言葉を聞いた瞬間、何やら苦しそうにしだし何度か呻き声が上がると、気づけば元の操に戻っていた。


「……ちゃん、操ちゃん」


「あれ、また私魂が……って人形がこっち

 来てる!」


気がついた操は状況が掴めず混乱していたので、アリスはなんとか落ち着かせようと試みた。


「操ちゃん、落ち着いて。私が人形を引きけつけるから、操ちゃんは浄化用の塩水と燃やす準備をしてくれない?」


「う、うん……分かった」


 状況はまだ分からない操だったが何をすればいいのか把握し、二人は互いの目を見合うと別々に分かれた。


「さて、そこの悪霊よ、少しは私を楽しませてくれるかな?」


 不敵な笑みを浮かべたアリスが鞘から刀を抜き、銀色の刀身が顕になると、人形は刃物をアリスに向かって突きつけようと試みる。だが、アリスの抜刀術『弧月』によって一刀の下に斬り捨てられ、二度と動くことはなかった。


「はぁ、まるでダメね。そんな付け焼き刃な攻撃じゃあ……私の足元になんて到底届かない」


拍子抜けしたアリスは肩をすくめると血漆を鞘の中へとしまうと鞘ごと煙のように消えてしまった。


 その後、人形は操によって無事に浄化し燃やされ「ひとりかくれんぼ」は終わったのだった。



__________________


どつかれました

なんで2,800字だったやつが4,400字になるのかと聞いてみたくなりました。


あっ、飯テロ回だったからですね!!そうですよね!


それでは参加してくださったDarsanさんのリンク貼っておきます、


『actors〜有栖川妖狐奇譚〜』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886317676


書き終わった感想としては……うん、やりごたえはあったね。けど、まる1日かかったぞ。

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