51話 喧嘩するほど

何とか誤解?が解けたユウとミーシェはマシュマロを加え、目的地である、ギリースに向けて旅を続けていた。

「ミノタウロス発見!今日の晩飯はステーキを頼む!」

「はいはい。」

「しゃあ、行くぜマッシュ。」

「わん!」

「マッシュじゃないから!マシュマロだから!そんなキノコみたいな名前付けないで!」

「どっちも変わんねえだろ…」

「変わるし!マシュマロの方が可愛い!」

「…わん!」

「わかったわかった。…ウィンドカッター。」

風属性魔法でミノタウロスの斧を吹き飛ばした。

「よし!今だマシュマロ!」

「わふ!」

「…だから行けよ。」

「まだマシュマロには早いよ〜。」

「そうだなぁ…でも少しは戦ってもらわないと…」

「うーん。あ、後ろ後ろ!ミノタウロスのこと忘れてるよ!」

「え?…ああ。」

ズボッ!

「おお…振り向いた時にタイミング良く心臓に腕が刺さったみたいだ。ラッキー。それじゃ失礼してと…」

ユウは胸から心臓を引き出した。

「いただきます。」

「ミノタウロスってなんかいいスキル持ってたっけ?」

「斧術だとよ。」

「じゃあその斧貰ってけば?」

「そうだな。なんかに使えるかもしれないしな。」

ユウは斧を空間魔法のアイテムボックスの中に入れた。

「そうだマシュマロ。お前スライムくらいは倒せるだろ?」

「あ、そうだね。まずはスライムから倒してみよ?」

「わん!」

「おお、やる気十分だな。…スライムはっと…お、いたいた。」

「よし!いけぇマシュマロー!」

「わう!」

気合十分でマシュマロはスライムの元へ駆けていった。



数分後。

「く、くぅん…」

「…お前…」

「…うん…」

「弱いな…」

「くぅ…」

スライムにフルボッコにされたマシュマロはユウとミーシェに助け出され目を回している。

「…まさかスライムに負けるとは…」

「…ど、どうする?」

「こいつをアイテムボックスの中に入れておくってのはどうだろう?」

「な!ダメだよ!この子の席は私の頭の上なの!」

「でもなぁ…」

「くぅん…」

「そうだ!ユウが鍛えてあげれば?」

「…それは無理だ。」

「え?なんで?」

「こいつ弱すぎるからうっかり殺しちゃうかもしれん。」

「そんなこと…」

「わふ!へっへっへっ!」

「…あるかも。」

「だろ?」

「どうしよう…」

「お前が鍛えたら?」

「え?私戦えないよ?」

「あいつも戦えないだろ?だからお前ら二人で基礎からやって、最後に俺が鍛える。それでどうだ?」

「確かに…私も鍛えれるから一石二鳥かも…」

「だろ?」

「決まりだね!早速走り込み行くぞー!マシュマロ。」

「…くぅん…」

「なんだ?嫌なのか?」

「わん…」

「お前がそう言うなら仕方ない…」

「わん!」

「なんて言うと思ったか?」

「わ?」

「甘えてんじゃねえ。とっとと行ってこーい!」

「行くよ!マシュマロ!」

「わ、わぅ…」

「いってらっしゃーい。ドリンク用意して待ってるからな。」

「うーん!ありがとー!」


それから二人は日が沈むまで特訓を続けた。

「はぁ…はぁ…ただいまユウ。」

「おう、お疲れ様。」

「疲れた〜。」

「くぅん…くぅん…」

「それは俺たちで言う「はぁ…はぁ…」か?」

「喉かわいた!」

「ほれ、ユウくん特製レモネードだ。」

「…飲めるの?」

「失礼な…ちゃんと味見したぞ?」

「いただきます…」

「わふ!」

「お前には冷たいミルクな。」

「わん!」

「どうだミーシェ。美味しいか?」

「…美味しい。」

「だろ?俺って結構料理得意かも。」

「そうだね。うどんも美味しかったし。」

「それよりもだ。特訓はどうだった?」

「うん。結構頑張ったよ。」

「そうか…マシュマロの方はどうだ?」

「わん!」

「そうか。」

「そうだ。ユウに見てもらいたいものがあるの。」

「ほう。特訓の成果…とかか?」

「うん、そんな感じ。」

「どれ。見せてみ。」

「いくよ…お手!」

「わん!」

ぱひゅ!

マシュマロはお手を見事に空ぶった。

「あれ?」

「わん!」

「おい、なんだこの茶番は…」

「おかしいなぁ…5時間くらい練習したのに…」

「5時間?始めたのがあれだから…お前ら…何時間走った?」

「あ…え?それはねー…ははは。忘れちった。ね?マシュマロ。」

「わん!」

「わ、私ご飯作るね…」

「わん…」

「まて二人とも。」

「はい!でもご飯が…」

「わふ…」

「二人とも正座。」

「え?」

「わふ?」

「せ!い!ざ!」

「は、はいぃ!」

「くぅん!」

そこでユウの爆裂魔法並の怒号が響いた。


「ううっ…しくしく…」

「くぅん…」

「なるほど。二人ともサボってお手の練習してたわけか。」

「ははは…」

「わふふ…」

「マシュマロ…お前の笑い方は無理があると思うぞ?」

「わん!」

「わん!じゃねえよ。」

「だってぇ…覚えさせてみたかったんだもん…」

「それで覚えたのがあの茶番か…」

「練習の時は出来たんだよ?でも本番に緊張するタイプみたいで…」

「どんなタイプだよ…人間か?」

「わふ…」

「まあいいや…明日からちゃんとやれよ?」

「うん!ご飯作るね〜!」

「わっほーい!」

「…お前本当に犬だよな?」

あ、狼か…



「美味しかったよミーシェ。」

「今回はステーキのソースにベリーを加えてみたの。どうだった?」

「美味かった。」

「良かった。」

「そろそろ寝るか。」

「うん。」

「あの…その…」

「ふふふ…おいで?」

「そ、それじゃあ失礼して…」

「何緊張してんの?」

「いやぁ…なんか新鮮だなぁって。」

「何が?」

「前の世界だと一人暮らしだったからさ。誰かと一緒に寝るなんてことなかったから…それも女の子となんて。」

「私もお姉ちゃんとしか寝てなかったからな…そう言えば初めてかも。」

「ん?」

「男の人と一緒に寝たのはユウが初めて。」

「そ、そうか…」

「わん!」

「ん?マシュマロ?どうしたの?」

「う〜…わん!」

「…悪いな。今日は俺の番だ。」

「わん!」

「ごめんね?今日はユウの番なの。」

「くぅん…」

「甘えてもだめだ。俺は絶対に動かん!」

「う〜…」

「ごめんね。布団には入っていいから。」

「くぅん…」

「おやすみ、マシュマロ。」

「おやすみな。」

「くぅん…」

そのままいつもと同じ気持ちのいい睡眠をとることが出来た。

翌朝

「うーん…もう朝か…ユウは起きてるかな…」

そう言って隣に目をやった。

「ふふふ、なんだかんだいって仲いいじゃん。」

「ぐぅ…ぐぅ……」

「…くぅん…」

「良かった…」

マシュマロを抱きしめて寝るユウをみて、ミーシェはほっこりした朝を迎えることが出来た。

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