41話 私がてめぇを守ろう

ユウside

「…起きたか?ミーシェ。」

「ユウ…」

「たく…泣き疲れたからって昼間から爆睡してんじゃねえよ。」

「…うん。」

「どうした?」

「…私…これからもユウについて行っていいの?今回みたいにまた…迷惑かけちゃうかもしれない。また…ユウを傷つけちゃうかもしれない。それでもユウは…私と一緒に…いてくれるの?」

「当たり前だろ?」

「料理出来る人なら他にいるよ?笑顔が可愛い人だって…それに夜も抱き枕にされなくて済むんだよ?私以外の人なら。」

「お前がいいんだよ。」

「ユウ…」

「ていうかお前じゃなきゃ俺がやだ。ミーシェより料理がうまい奴がいるかよ。笑顔だってミーシェが一番可愛い。ミーシェみたいな女の子が俺に抱きついてくれるならそれは迷惑なんがじゃない。逆に嬉しい。」

「ユ…ユウ…」

「だから…俺はお前が好きだ。愛してる。…また俺に…ついてきてくれるか?」

「…うん!…私も…大好き…!」

俺たちは互いに唇を重ねた。



「さて…最後の用事を済ませるとするかな…」

「最後の用事?」

「ほら…もう大丈夫だから…出てこいよ。」

茂みで隠れている存在に声をかけた。

「あ、あの…その…」

出てきたのはダークエルフの少女だった。

「あ、あの時の…」

「お姉ちゃんも…ダークエルフ…なの?」

「うん…そうだよ。」

「…よかっ…たぁ…」

「え?」

「私…一人じゃなかった…私、カナっていうの!お姉ちゃんは?」

「私はミーシェ。」

「初めて…同じ人に会えた…ありがとうお姉ちゃん。これで私はもう大丈夫。」

「そう…」

「あ、時間だから戻るね!」

「戻るって?」

「遅れたら殴られちゃうの…痛いのは…嫌だから…じゃあね!」

「あ…」

「待て。」

「?…なぁに?お兄ちゃん。」

「目を…瞑ってごらん。」

「?…こう?」

カチャ…

「!…なにを…」

「開けてごらん。」

「く、首輪が…」

首輪はこわれ地面に落ちた。

「どう…して?」

「俺は…もうミーシェのように悲しい目にあうのを見るのが嫌なんだ。」

「ユウ…」

「あり…ありがとうございます…お兄ちゃん…」

「ああ、気にするな…」

「でもユウ、この子どうするの?連れてくの?」

「そうだなぁ…決めてなかった。」

「おや?ユウくんとミーシェさんではありませんか。」

そこに現れたのは昔助けたスコットさんだった。

「スコットさん!久しぶりです、どうしてここに?」

「私は商人ですからな。ここまで売りに来たのですが…ここで何かあったようですね。」

「あ、ちょっとやらかしちゃいまして…」

「相変わらずですね。…そちらの子は?」

「あ、この子は…そうだ!あのぉースコットさん?」

「なんですか?」

「実はこの子…ダークエルフでして…」

「そ、そうなんですか?」

「はい、実はミーシェも…」

「はははっ。こりゃ驚いた。道理で美しいわけだ。」

「スコットさんはダークエルフに偏見があったりします?」

「周りのものにはあるようですが、私にはそんなこと関係ありませんね…」

「そうですか…ならこの子行商の旅に一緒に連れてって貰えませんかね?もちろん耳はこちらで隠します。」

「つまり私にこの子の面倒を見てほしいと?」

「はい。そういうことです。」

「ふーむ…」

スコットさんはまじまじとカナを見つめた。

「え、えっと…」

「お嬢ちゃん。名前はなんて言うのかな?」

「わ、私はカナです。」

「ふむ。分かりました。私が面倒を見ましょう。」

「本当ですか!」

「はい。ただし…あなたにはしっかり働いてもらいますよ?」

「え…」

恐らく奴隷のようなものを想像しただろう。しかし、スコットさんは白い歯を見せ、ニカッと笑った。

「うちの看板娘としてね!」

「え?」

「もちろん三食、寝床は保証しますよ?私の商人魂に誓ってね。」

「スコットさん…」

「私も伊達に商人をやっていません。見る目ぐらいはありますよ。彼女ならきっと私の役に立ってくれるでしょう。」

「スコット…おじさん?」

「やあ、これから頼むよ?カナ。」

「うん!」

「そうと決まれば早速次の街に向かいましょう。」

「はい!スコットおじさん!」

「頼みます。スコットさん。」

「はい。行きますよカナ。」

「うん!あ…」

カナは俺の元によってきた。

「ん?どした?」

「あの…ありがとう!お兄ちゃん。」

「フ…気にするな。しっかりスコットさんのお手伝いするんだぞ?」

「うん!お姉ちゃん!頑張って!私も頑張るから!」

「うん!バイバイ!カナちゃん。」

カナと、スコットさんは手を振って去っていった。

「…ありがとね…ユウ。」

「気にすんな。俺がやりたかったからやったんだ。」

「でも…ありがと…」

「おう。…さて、じゃあ野宿の準備でもするか。」

「うん!」

その直後氷の城が割れた。

「!…なんだ!」

城の方に目をやると、異形の形のものが現れた。

「なんだ…これは…」

「オ…オオオオ…ユルサナイ!アナタダケハ…コノワタクシガァ!」

それは異形と化した7大魔王、レヴィアタンだった。

とっさのことで、ユウも反応しきれなかった。

その矛先はミーシェに向いた。

「ミーシェ!!」

「ユウ…!」

すると不思議なことに、ミーシェの体から何かが飛び出した。

さっきまでのもうひとつのミーシェの姿だ。

レヴィアタンの腕がもう1人のミーシェの胸を貫いた。

「がっ!はぁ…」

「お、お前!」

「な、なんで…」

「ユルサン!ユルサン!」

「ちっ!まずはあいつからだな。ブラックホール。」

「クソ!コノワタクシガァ!イ、イヤダァァァ!」

「とっとと…死ね。」

そのままレヴィアタンは押しつぶされた。

「大丈夫か?ミーシェ。」

「私は大丈夫…でも…」

恐らく、もう1人のミーシェはもう助からないだろう。

「はぁ…はぁ…よう…また会ったな…」

「どうして?どうして庇ったの?」

「お前は…昔から…鈍臭いからな…私が見てないと…すぐ…ドジをしちまう…そんなことで…大切な恋人を…悲しませんなよ…なあユウ…ちょっと2人にしてくれるか?」

「…わかった。」



ミーシェside

「はぁ…お前のために死ななくちゃいけねえのか…私は。」

「喋っちゃダメ。」

「いいんだよ。どうせ死ぬからな。」

「…どうして?」

「あ?」

「あなたは私を苦しめるために生まれたんでしょ?なんで…なんで庇うのよ!」

「…私はお前を守るために生まれた…」

「え?」

「お前が壊れないように…私が暴れることで…壊れるのを防いでいたのさ。」

「そんな…だって…」

「それに私はお前だ。自分が自分を守るなんて…当たり前のことだろ?」

「…ううっ…うう…」

「ちっ!泣いてんじゃねえよ。俺がいなくなって本望だろ?」

「私…あなたのこと…誤解してた…」

「やめ…ろ…」

「ありがとう!ずっと…私を…守ってくれて!」

「礼を言われるのは…慣れてねえんだ…私は…辞めてくれ…」

「ありがと…!」

「…もう…私なしでも…心配ないよな?」

「うん!私には…ユウがいる。」

「フ…おいユウ!聞いてんだろ?」

「ああ。」

「手がかかるけど…こいつのこと…頼むぞ…」

「…ああ。もちろんだ。」

「お前に全部返す。もう私が出てくることは無い。」

「うん…」

「…楽しくやれよ。」

そうしてもう1人のミーシェは光の粒子となり消えていった。

「ううっ…うう…」

「やっぱり…あいつもお前なんだな。」

「うん…ずっと…守ってくれてたんだ…」

日は沈み、エルフの里には夜が来た。

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