17話 縮まる距離

「宿代一人分しかない…」

「で?」

「いやいやミーシェさん?」

「別に何も問題ないじゃない。一人分の部屋に2人で泊まればいいでしょ?」

「いやいやそれはさすがに…お前はそれでいいのか?」

「私はついてきてる身だから贅沢は言えないよ。」

「いや、別に甘えてもいいんだぞ?」

「別に大丈夫。」

「そうか…じゃあ一人部屋をお願いします。」

「分かりました。ご飯は部屋にお運びしますか?」

「あ、ご飯はいらないです。」

食えないしな…

「かしこまりました。ではごゆっくりどうぞ〜。」



さて……どうしようどうしようどうしようどうしよう!

ミーシェと同じ部屋で寝ることになっちまった!

俺の理性はもつのか?

「ユウ?」

「あ、ああ、ど、どうした?」

「考え事?」

「あ、ああ。」

「もしかして明日のこと?」

「まあそんなところだ。」

すいません…もっとやましいこと考えてました…

お風呂どうする?私先入ってもいい?」

「ああ…いいよ。」

「ありがとー。」



「お先ありがとー。ふうスッキリした〜。」

風呂上がりのミーシェ。どうしても濡れた髪や、火照った肌に目を奪われてしまう。

「お、じゃあ次は俺が入るな。」

「うん、ごゆっくりー。」


「ふいー…やっぱ風呂は気持ちいいな…そういえばここ来てから体は洗えても風呂に入ったことは無かったな…そういえば寝る時は俺が床使った方がいいよな…なんか緊張する…」

そのままやましいことを考え、気づくとかなりの時間が経っていた。

「さて、そろそろ出るかな…」

テキパキと着替えを済ませたが、突如激しいめまいが襲う。

…なんだ…これ…頭がクラクラする。

なんだかこの感覚が懐かしかった。

あ、これ前に感じたことあるわ……のぼせたな…

そのままユウは意識を手放した。



ガターン!

「え?何今の音?ユウ?!」

何かあったのかな?

急いで風呂場に駆けつけるとユウが倒れていた。

「ユウ!ユウ!どうしたの!目を開けて!死ないで!」

「んん…ミーシェ?」

「…え?」

見ると顔が赤い。どうやらのぼせているようだ。

「…ほっ…なんだ〜。良かった〜…いけない!運ばなきゃ。立てる?」

「う…うう…なん…とか。」

「ほら、肩につかまって。」

「…うう」



「ふう〜なんとか運べた〜そうだうちわで仰いであげなきゃ。」

「…うう」

「まだ苦しい?」

「…ちょっと。」

「…」

「…」

「…どうしよう………そうだ!」




うーん…頭がクラクラする。

俺どうしたんだっけ?確か風呂はいった後…そうかのぼせたのか…

「スースー。」

「ん?寝息?こんな近くで?」

目を開けるとミーシェの顔がすぐ近くにあった。

「イ!」

なんだこれ!どゆこと?

頭に感じる柔らかい感触。これは…


膝…枕…


と、取り敢えずこのままにしておこう。

……どうしよう…

「…んにゃ?…目が覚めたのねユウ?」

「ああ。看病してくれたのか。ありがとな。」

「んーん。大丈夫。ベッドに移る?」

「……いやおれはここで…」

「え?」

「い、いやなんでもない…ミーシェがベッドを使えよ。俺は床で十分だ。」

「ダメだよ!ユウが使って!」

「いやいやここは女の子がだな…」

「ユウが使うの!」

「いや、それは流石に…」

「め!」

「うう…じゃあ一緒に使うか?」

「…いいわ。そうしよ。」

「…え?」

「私はこっち使うからユウはそっち使って。」

「でも…」

「おやすみ!」

「お、おやすみ?」


どうしてこうなった…?

寝れるわけないでしょ?

…ダメだダメだ!考えるな!もう寝よう!

「…」

「…」

「…」

「…うう…ぐすっ…お姉ちゃん…」

「…ミーシェ?」

「!…お、起きてたの?…気にしないで…」

「…」

「…うう…」

「…お姉さん…どんな人だったんだ?」

「!…お姉ちゃんは…優しくて、強くて、綺麗で、私の尊敬する人…」

「…そうか。」

「ほんとに強いんだよ?ユウなんてイチコロだよ?」

「…マジで?」

「うん!それで私なんかじゃ相手にならないくらい綺麗で…私にとっても優しくて…私が困ってる時は自分を犠牲にしてでも助けてくれた…」

「…すごい人だな」

「…うん。…大好きなお姉ちゃん…」

「…なら1日でも早く助けてあげなきゃな。」

「…うん。」

「それとミーシェ?お姉さんはたしかに綺麗な人だったけどお前も十分あれだ…可愛いと思うぞ…ゴニョニョ…」

「…」

「…」

「ご、ごめん!そういう事だから!きっと助けてやるから…もう泣くな。おやすみ!」

「…」

何言ってんだ俺!チキンでヘタレな俺がこんなこと言うなんて!

…死にてえ…

ギュ

え?

「…ありがと…ユウ。…しばらくこうしてていい?」

「あ、ああ、い、いいゾ!」

「ふふ…おやすみなさい。ユウ…」

「お、おやすみ…」

この日の夜はユウにとってとても長いもののように感じた。



「ふあーあ…朝か。」

「おはよう。ユウ。」

「ああ…おはよ。」

どうしても昨日のことを思い出してしまう。顔は赤くなってないだろうか。

「コーヒー入れたよ。どうぞ。」

「ありがと。」

「今日はどうする?」

「取り敢えずお金受け取ってから城に忍び込む作戦を立てよう。」

「そうだね。」

「じゃあ早速ギルドに行くとするか!」

「うん。」



「おう、待ってたぜ兄ちゃん。昨日は良くもやってくれたなぁ…

ええ?覚悟は出来てるんだろうな?」

「はぁ…テンプレ回収したんだからもう出てくるなよ…邪魔。」

冒険者の男を一睨みする。

スキル 暗殺術 の殺気だ。

「ひっ!…ひい!…」

冒険者の男はその場で尻もちをつき、スボンを濡らしていた。

「…ギルドマスターのところに案内してもらえますか??」

お漏らし冒険者は放っておいて、受付に話しかけた。

「ユウ様ですね…かしこまりました。」



「おう。来たか。」

「こんにちは。それでお金は準備できたでしょうか?」

「ああ…今持ってきてやるよ。頼む。」

すると何人もの屈強な男が大きな袋を持ってやってきた。

「えっと?…これは?」

「計算の結果今回の金額は聖金貨1億枚だ。受け取りな。」

「…マジですか…いいんですか?こんなに。」

「何言ってんだ?見たらグランドドラゴンの角まであったぞ?あれは伝説級の魔物だぞ?もう驚きすぎて死ぬかと思ったくらいだからな?この金額は妥当だ。」

「はぁ…」

マジか…なんか俺…金持ちになっちゃった…



―――――――――――――――――――――――――――

この世界の金額についての説明(本編ではありません)


銅貨→聖銅貨→銀貨→聖銀貨→金貨→聖金貨

こんな感じです。

銅貨100枚で聖銅貨と100枚で1桁上がります。

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