幕間

 白い,ただ白い世界。

 光であり,光が埋め尽くすが故の白い闇。

 その中に,一人の老人が現れた。


 まるで元々存在したかのように。

 音もなく,気配もなく顕現した。


「ふむ…例の『彼』があちらにいくのが早まったようじゃな」

 そう老人がつぶやく。


「それは僥倖。我らとしては願ってもありませんな」

 中年男性の声が響く。

 同時に老人の隣に,50代程に見える男性が顕現した。


「でも大丈夫?あの娘を見つけてくれるかしらん?」

 今度は妙齢の女性。


「そこはセロウス殿がどうにかなさるのでしょう?」

 十代の凛々しい少女の声も加わる。


「カトルス。なんじゃそのブン投げっぷりは…。もちろん問題はないがのう……」

 老人が答える。


「いずれにしても,彼がこちらに戻ってこれたとは…。

 そのことを喜ぶべきでしょう。よもやあの箱庭に移っていたとは……」

 青年の声が割り込む。


「しかし,例の彼女の件もあるのですよ。彼は彼女を見つけ,その上で『アレ』を処理するのでしょう?

 あの娘だけで問題ないでしょうか……」

 落ち着いた,そしてどこか威厳のある老齢の女性の声がする。


「そこは色々ステータスも渡すからのう。それに,未だ目覚めておらんが面白い能力も持っておるようじゃ。コレは儂も渡しておらん……というか,向こうで学んだことが影響しておるようじゃのう……どうにかなるじゃろ,ふぉっふぉっふぉっ」

 老人が笑う。


「それよりも,あの娘とイイ関係になってほしいわねぇ~。後押ししちゃおうかしらん?」

 妙齢の女性が嬉しそうに話す。


「お前がすると,後押しどころか介入になるであろう。少しは自重せんか,テルセラ」

 中年男性がたしなめる。


「いいじゃないのよぉ~,セグントス。ぶーぶー」

 妙齢の女性が拗ねたように口を尖らせる。


「まぁ,そろそろ彼も目覚めることじゃ。詳細は洗礼の時にでも伝えておこうかの。色々スキルも発現するじゃろうて。さ,それぞれ務めに戻るぞ……」

 その一言で,全ての声が消え,気配が消えた。

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