1つ、恋の花が咲きまして、1つ、恋の蕾ができました。

柚雨。

第1話

千坂 璃乃 (ちさか りの) side


体がだるい。

朝からコーヒーを飲んだからだろうか。

普段は朝ごはん食べないのに、今日に限って食べてきたからだろうか。

しかも今日は雨。秋雨だからか寒い。

なのに、長袖ブラウス1枚で夏と変わらない格好だからだろうか。正直寒い。体育館寒いよ……。

まぁとりあえず、ずっとたって先生の話聞いてるのだいぶ辛い。今すぐ座りたい。ていうかいっそ寝たい。保健室のベッドで寝たい。

とか思ってたら、体がグラって傾いた。

あ、倒れる。

視界はそのままブラックアウトした。


***


なんだろう。暖かい、

あと揺れる。

なんだか地味に不安定。

でも、気持ちいい。


***


暗く長いトンネルを抜けると、そこは雪国でした。

……なんちゃって。

目を開けると、目の前は真っ白。まぁそりゃそうか。

ここは保健室。どうやらベッドの上らしい。

倒れたんだなー私。誰が運んでくれたんだろう。まぁ先生かな。担架で運ばれたのかなー。恥ずかしいなー。


とか思いながら体を起こすと男子生徒が1人、椅子に座って寝ていた。


びっくりした。誰もいないと思ってたし……。

よくよく見るとあらまあ見知った顔じゃないですか。

隣の席のヤンキー君。名前は確か、桐山 諒。(きりやま りょう)

まさか桐山君が運んでくれたとか……?


シャッ

「あら、起きた?」

「あ、はい。」

「後で彼にお礼いいなよ、運んでくれたから。」

シャッ


ベッドの前にある仕切りのカーテンが開き、保険医が顔を覗かせそう告げていった。


おーう、まじっすか。ただの怖いヤンキー君だと思ってたごめんね。

こっそり近づいて耳元に口を寄せ、


「ありがと。」


さー、もうひと眠りしよ。


***


桐山 諒 side


「ふざけんなよ……。」


さっきの耳打ちで目が覚めた。

が、動くわけにもいかず、寝た振りをしていた。

やっと千坂が寝たから動ける。

つーか、女が恋人でも友人でもない男に耳打ちって……。

馬鹿じゃね?めっちゃ恥ずかしいんだけど……。

まぁ、当の本人様は気にする様子もなくスヤスヤ眠っておられますけど。

……可愛い寝顔ですこと。

俺も男ですし?好きな子が目の前で眠ってたらさ、


「……食べちゃうぞ。」


なんて。馬鹿みてーだな。

なんで俺こいつのこと好きなんだろう。

また目を覚ます前に帰ろ。


「じゃーな、お姫サマ。」


そう言って、頭を少し撫でてからその場をあとにした。


***


ごめん桐山くん……。私寝てないよ……。

寝ようと思いながらうとうとはしていたが、実はちゃんとは寝ていなかった。

何「食べちゃうぞ。」って。ヤンキーのくせに。

可愛いなおい。不覚にも萌えたわ。

でも一番謎なのが「お姫サマ」。あとなんで頭撫でたの?

さっきから心臓がうるさいんだけど……。

この気持ちはなんでしょう?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る