5#風船アルパカ

 「いいなあ!いいなあ!風船いいなあ!」


 アルパカのアールは、アルパカ仲間のパーカーが白い風船の紐を口にくわえているのを目を輝かせて見詰めた。


 「いいでしょ。」


 アルパカのパーカーは、鼻の孔をパンパンにして、物欲しげなアールにどや顔をした。


 「いいな!いいな!ちょうだい!ちょうだい!」


 アルパカのアールは、顔を伸ばしてアルパカのパーカーがくわえている白い風船の紐を奪おうと歯を向けた。


 「ねぇ、ちょうだい!ちょうだい!」


 「やだ!!」


 「ねぇ、ちょうだい!ちょうだい!」


 「やだ!!」


 「ねぇ、ちょうだい!ちょうだい!」


 「やだ!!」


 「ねぇ、ちょうだい!ちょうだい!」


 「やだ!!」


 「ねぇ、ちょうだい!ちょうだい!」


 「やだ!!」


 「だから、ちょうだい!ちょうだい!」


 「欲しいなら、自分で拾いなさいよ!!」


 「だから!!ちょうだい!ちょうだい!」


 「やだって言ってるでしょ!!」


 「だーかーらー!!ちょうだい!ちょうだい!」


 「しつこいねぇ!!」


 アルパカのパーカーはたまらなくなって、執拗に白い風船を奪おうとするアルパカのアールから、一目散に逃げた。


 「ねぇ、ちょうだい!ちょうだい!」


 「やだ!!」


 「ねぇ、ちょうだい!ちょうだい!」


 「やだ!!」


 「ねぇ、ちょうだい!ちょうだい!」


 「やだ!!」


 「ねぇ、ちょうだい!ちょうだい!」


 「やだ!!」


 「ねぇ、ちょうだい!ちょうだい!」


 「やだ!!」


 「ねぇ、ちょうだい!ちょうだい!」


 「やだ!!」




 白い風船の紐をくわえて必死に逃げる、アルパカのパーカー。


 風船を奪いに追走する、アルパカのアール。


 2匹のアルパカは牧場じゅうをグルグル走り回り、回りの牧場の動物達は囃し立てたり爆笑したり、やんややんや盛り上がった。



 「ん?」


 アルパカのアールは、脚元に萎んだ風船が堕ちているのを見つけた。


 「そうだ!!しめしめ・・・」




 「ん?アールの奴、風船追いかけるのをやめたの?」


 しつこいアルパカのアールの気配がしなくなって、ふと後ろを向いたアルパカのパーカーはホッと胸を撫で下ろした。


 

 ぷぅ~~~~~~~~~~!!



 「?!」


 アルパカのパーカーは、仰天した。


 後ろから、アルパカのアールが赤い風船を息を入れて口で膨らませながら、アルパカのパーカーに迫ってきた。


 「うわー!!風船割れるーー!!割れるーー!!風船膨らませるなーーー!!」



 ぷぅ~~~~~~~~~!!


 ぷぅ~~~~~~~~~!!



 白い風船の紐をくわえて血相を変えて逃げ惑う、アルパカのパーカー。


 大きく大きく風船を膨らませながら追いかける、アルパカのアール。



 牧場じゅうを駆け回るアルパカ達を、牧場の動物達は腹を抱えて爆笑しながら、やんややんやと囃し立てて盛り上がった。



 ぷぅ~~~~~~~!!


 ぷぅ~~~~~~~!!



 ぱぁーーーーーん!!



 「ぎゃっ!!」


 アルパカのアールの膨らませた赤い風船が遂に割れ、ビックリ仰天したアルパカのパーカーは思わず転倒した。



 ぱぁーーーん!



 「ぎゃっ!」


 アルパカのパーカーの転んだ重みで、持っていた白い風船が下敷きになってパンクしてしまった。



 「あーあ・・・」


 「風船割れちゃった・・・」


 「私の風船も割れちゃった・・・」


 しょんぼりとする、アルパカ達。


 「ぷーっ!!」


 「くっくっく!!」


 2匹の泣き顔のアルパカは、段々と含み笑いがこみ上げ、遂に爆笑に変わった。


 「はっはっはっは!!」


 「はっはっはっは!!」


 他の牧場の動物達も釣られて、皆で爆笑した。




 その中、風船をいっぱいくわえた牧羊犬が駆けていった。


 「あれ?何で皆笑ってるの?」






 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

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