生徒会長の不思議な告白

沢登

第1話 告白

1.

 何も変わらない日だった。



「こんにちは、手幡テバタさん」



 何も変わらず、 いつものように教室で友達とお昼ご飯を食べていた。しかし、突然話しかけられた相手は、この前の生徒会選挙で当選した生徒会長だった。お弁当を食べていた手が止まるどころか、持っていた箸を落とす。しかし拾っている場合じゃない。

 生徒会長が直々に来るなんて、私何かやらかした!!?



「そんな身構えないで」



 あはは、と爽やかな笑顔の生徒会長。


 いや、身構えたくもなる。成績よし、 運動神経よし、顔よし、性格よし、 おまけに生徒会長になれるぐらい人望も厚い男が、全てにおいて平均女に何の用だ。というか、 接点もないのにどうやって名前を知った。やっぱり何かやらかしたのだろうか。


 隣で友達の藍花アイカも、いつ接点を持った!?という目で睨んでくる。違う。誤解だ。何の取り柄もない奴だってのは、君が1番知っているだろ!?



「手幡李眞リサナさん。ご飯中にごめんね。ちょっといいかな?」



 食事中を考慮してくれるなんていい男だ。クラスの野郎どもも見習え。



「な、なんでしょうか……」


「だからそんなに身構えなくていいってば。お願いがあって来たんだ。いいかな?」



 お願い?



「私にできることなら……」


「大丈夫、簡単だよ。俺と付き合ってくれないかな?」



 ……はい?

 付き合ってくれ?ツキアッテクレ?tukiattekure?

 あー、あれか。彼女になって、ではなく。



「あ、どこかに付き合って、じゃないからね。俺の彼女になってくれって意味だからね」



 ……え。



「ええええええええええ!!?」



 おい藍花。なぜ私より先に驚く。おかげで驚きがどこか行ったわ。生徒会長の登場でざわついていた教室も、突然の発言に騒がしくなる。



「えっと……、藍花の間違いでは?」



 藍花は整った顔をした美人で、スタイルもいい。育ちもいいし、成績も良くて、男子からの人気は高い。



御門ミカドさんと間違えてないよ。手幡さんがいいんだ」



 照れた様子もなく、変わらない笑顔で生徒会長は言う。……なんだこれ、私だけが焦っているのか。



「じゃあ、からかってます?」


「なんでそうなるのさ」


「だって……、いつもと変わらないじゃないですか」



 全校集会とか、みんなの前で話す生徒会長しか知らないけど、表情も声色も今と何も変わらない。



「そっか。でも手幡さん。これでも俺、初めて告白するんだよ?」



 さらっと自慢入れるな。すいませんね、私は初めて告白されるもんでね。



「まぁ、いきなりでビックリさせちゃったし、ひとまず帰るね。返事はまた今度聞かせて」



 にこっと愛嬌のある笑顔を残して生徒会長は教室を出ていく。

 ……一体なんだったんだ。





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