移り気の印は、ひたむきな愛の証

 平安時代の下級貴族に仕える女房が主筋を見守り支える、淡く優しい初恋の物語です。
 派手な展開はありませんが、陸奥の姉のような忠心や陽花子のまっすぐさが可愛らしく、梅雨の物語だというのにじめじめした感じもなく、雨上がりの爽やかな空気を感じさせます。特別捻ったり無理をした設定もないので、すっと頭の中に物語が入ってきやすいのもいいです。
 土によって色を変えることから移り気の象徴とされ、花言葉にもなっている紫陽花ですが、この紫陽花は一途そのもの。そういう小道具の使い方も見事だなあと思います。