夜も更けにし。

深夜 酔人

ぶれいぶ・ふとーりー

 午前一時前。僕は課題の手を止め、ソファに身を投げ出した。もうずっと昔から家にあるソファはぼふぅん、と気だるげに沈んだ。僕は近くのお菓子箱からラムネ菓子を取り出し、セロファンを剥いて口の中に一つ、今度は二つ一気にと放り込む。しゅわりと溶ける感覚を楽しむ。特にやることもなくなった僕は、スマホのSNSアプリを開いた。

 ふとタイムラインに「最近の若いもんは情けない」「俺が若い頃は…… 」といった書き込みがあるのを見つけた。うわぁ、古いなあ、と思いながらちょっと読んでみるとそこには、勇ましく少年時代を過ごすブレイブストーリーが展開されていた。結構面白くて僕は思わずスクショした。なんだよこの「青春の時期は無限の可能性に溢れている!」って。迷言かよ。とかくだらないツッコミをいれ、ちょっと笑った。

 てか俺も歳をとるんだよな、あー、ヤダな。僕は唐突にそんなことに気づいた。当たり前のことだが想像出来ないのがなかなかに不思議だ。この日常が思い出となる。そう考えると怖くもある。いや、まあそんなすごい日常もおくってないんだけどね。友達なんてそこまでいないし目立った出来事もなかった。恋愛なんてもってのほか。修学旅行だって、平穏無事、何事もなく終わった。まったく、面白みの一つもない日常である。こんな物語を見て大人の僕はほんとにどう思うんだろう、と不安になった。


 失望するだろうか。


 呆れるだろうか。


 それとも、「下らないな」と言いながら苦笑するのだろうか。


 こんなよく分からん日常を、「青春」と呼んで笑える日が来るだろうか。これまた全く想像できない。多分その時にしかわからないのだろう。う〜ん、気づけばここまで深く考えたわけだがあまり興味もわかないな。自分に笑いが出てくる。


 今はラムネ美味しいとか眠いとか、そんなくだらない事考えていればいいさ。大人になった時、盛大に苦笑できるような下らないことを。


 時計を見ると、時刻は午前1時半。のそりと立ち上がった僕は、最後にラムネを一個食べたあと冷房と泣く泣く別れ、ベッドに寝っ転がった。眠気はあまり来ず、僕はラムネ食べるんじゃなかった、と顔をしかめ、苦笑した。

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