第3話 地震@エクレツェア

 ここは異世界のターミナル、エクレツェア。

 この世界はあらゆる世界から旅人が訪れ、時には定住し、時にはまたさすらっていく。

 全てが常に移ろうこの世界で、ただ変わらないのは首都クリティクアの優雅な街並み。あくまでもヨーロッパ調のこの街並みは、よしきの提案だ。

 町の皆もそれを望み、芸術的な歴史の集合体としてあらゆる時代の建築物が建てられた。ロマネスク、アラベスク、ゴシック、オリエント。強欲と言われても仕方のない欲張りな人間が、自意識を元によって集めた世界のようだ。

 和風、中華、近未来、古代、宇宙。他にも様々なテーマがちりばめられたこの世界は、どこかゲームのなかにも見えた。

 だが、ゲームのなかにすでに再現されている物を異世界に移しただけなのだから、そこはたやすいと言わざる得ない。

 優しい反面、一人では生きていけないこの世界が、いつ人間たちに世界の絶望を教えるのか、定かではない。だた、そのなかでも詠嘆のエクレツェアだけは、その色と味を知っているように思えた。

 優雅な世界はここまで来たが、きっとそれでも苦しんでいるやつはいくらでもいて、我らとてその対象外ではないのだ。

 そんな人々の悩みを解決することで、チームエクレツェアは有名になり、強くなり、大きくなった。今や異世界規模の事業を繰り広げるに至る。

 そうこうしてでかくなったこの街クリティクアはそのチームのの本拠地がある場所だ。

 人々はチームエクレツェアの力を頼り、あらゆる依頼を持ちかける。だが、彼らの仕事ぶりに文句をいうものがいないが、一つだけ欠点があるという。

 それはチームエクレツェアが務める建物の入り口に備えられた門が大きすぎて、ノックしても誰も気がつかないということだ。この門は度々訪れるものを門前払いにしてきた。

 だが、それでも人々は門を叩いて訪れる。

 もちろん、今日も門が叩かれる。

 しかし、それはいつもと違って、建物全体を揺るがせるほどの強大なノックだった。


 ズシィン、ズシィン、ズシィン……


「なんだなんだ?」

 一人の青年が慌ててあたりを見渡す。


 ズシィン、ズシィン、ズシィン……


 また建物が振動して、その振動で部屋の中のインテリア全てが揺れ動く。

 青年はここに来てまだ日が浅い。彼はようやく己の部屋を手に入れて、部屋の掃除をしている最中であった。

 しかし、振動はやまない。ズシィン、ズシィン、と騒ぎたてながら彼の心までも忙し立てる。

「一体なんなんだよ!」

 せっかく掃除して並べた部屋のインテリアが次々と揺れては倒れ始める。

 埃が舞って、足元に落ちるとぶつかって奇妙な音を立てた。足で転がしてみると破片が溢れる。

 青年はイラっとして、


「どこのどいつだこのやろう!」


 しかし、振動の主は騒ぐなと言わんばかりに大きく建物を揺らして、彼の頭上にある重い荷物を落としてみせる。

 それが頭にぶつかった瞬間、青年太一の意識が途絶えた。

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