第2話

ボクたちの朝は早い。

いつも眠いところを起こされてお勉強。

だけど、ボクが行く競馬場ってところはもっと朝が早いんだって。

今から早起きの習慣つけなきゃいけないね。

お兄さんに連れられて部屋から出る。


ここに来て何日か経った。

お向かいのタッカーくんとはすっかり仲良しになったよ。

タッカーくんは大きな体してるのに、性格は少しのんびりしてる。

だから、お勉強に行くときはいつもボクから声をかけるんだ。

そしたら、「ちょっと待ってー」と言いながら出てくる。

そうして、ふたりで馬具をつけてもらって、お勉強に行くんだ。


ボクたちのお勉強ってのは、乗ってる人の言うことをきちんと聞くってこと。

そして、もっと速く走れるように練習をすること。

そのためにいろんなことをするんだよ。

丸い建物の中でグルグル走ったりもするし、お兄さんを背中に乗せてゆっくり走ったりもする。

覚えることは山ほどあるんだけど、ボクは走るのが大好きだから苦にならないんだ。

馬具をつけてもらってるうちに、ボクはどんどんやる気になっちゃう。

お兄さんは馬具をつけながら「おー、やる気スイッチが入ったねー」って言ってくれる。

そう、ボクは知ってるんだ。

馬具をつけたら走るんだってことをね。


お勉強が終わったらシャワーを使わせてもらうんだ。

お兄さんが体中洗ってくれた後に、濡れてるところがないぐらいくまなく拭いてくれる。

それから部屋に戻ってご飯をもらうんだ。

ここのご飯はとってもおいしくて、ついつい前脚が出ちゃう。

桶の中をよく見てみると、牧草の他にもいろんな物が入ってる。

黄色い粒は甘いし、白っぽい粒はいい匂いがする。

牧草だけでもおいしいけど、こうしていろいろ入ってる方がおいしいよね。


ご飯を食べ終えたら、窓から外を見る。

景色がいいのもなんだけど、お隣の女の子に会えないかなーって期待してるんだ。

お兄さんから、隣にいるのはフェアリーちゃんって仔だって聞いた。

たまに声は聞こえてくるんだけど、まだちゃんと見たことないんだよな。


そういえば。

ご飯に入ってる粒は畑ってところで作ってるんだって。

同級生の誰かが言ってたんだ。その仔のいたところではボクたち馬のいるところの他に畑ってところがあって、こういう粒を作ってたんだって。

そういうところがあるってことは、そこに行けばおいしい粒がいっぱい食べられるのかなあ。


ご飯が終わった頃に、お兄さんたちが桶を回収しに来る。

ボクたちの様子を見たり、時々遊んでくれたりもするんだ。

でもね、ボク、知ってるんだよ。

お兄さん、芦毛の仔が好きなんだよね。

ボクは栗毛だからなあ。今度砂浴びして真っ白になってみようかな。

え?

砂浴び出来ないの?代わりにシャワーしてるからダメなの?

残念。

考えてみたら外に出ても砂場でのんびり出来ないもんね。

子供の頃ならたくさん砂浴び出来たんだけどなあ。


お向かいでタッカーくんがごろんと横になって寝てる。

ボクもなんだか食べ過ぎたみたいで、少しお腹が苦しいんだ。

少し横になろうかな。


横になってしばらくしたら、お腹のラッパが鳴り出した。

いっぱい食べたからかなあ。お行儀悪くてごめんなさい。

でも、ラッパが鳴り止まなくなって、今度は少し焦ってきた。

そうしたら、美人のお姉さんが様子を見に来てくれたんだ。

あとで聞いたら、お姉さんはお医者さんなんだって。

こんな優しいお医者さんなら、安心だよ。


明日も早いから、そろそろ寝るね。

おやすみなさい。

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