美しく強く気高くぶっ飛んだ女達あるいはクソデカ感情が好きな人間に刺さる

序盤の戦地での描写で世界観に一気に引き込まれ、その後すぐに旧知との美しい思い出回想にエモ死の予兆を感じて期待しながら読み進めると、丁寧で美しい言葉が並び、物語の世界と美しい登場人物達にどっぷり浸からせてくれます。

メイン主人公のイケメン女軍人ヴィルヘルミナと、元女優で望まぬ生活を強いられているシャルロッテが再会するまでたっぷり時間をかけて世界観に浸らせて、ようやく再会。

丁寧に丁寧に沼に落とされた後の二人の再会シーンはあまりに尊くて鳥肌が立ちました。

クソデカ感情好きの同志は「これだよ、これ……!」と読みながら悲鳴を上げると思います。既に他の方が書いてらっしゃいますが、とりあえずここまでだけでも読んでほしい。あとは勝手に指が進みます。

「友の前では綺麗な自分でいたい」「君との思い出があれば生きていける」「共に戦う」系の文学作品やクソデカ感情小説を好んで読む、書く人は絶対好きだと思います。恋愛や肉体的な繋がりではなく、信頼しあい尊敬しあう友人同士のお話、最高にエモいです。とにかくメイン二人の関係性が刺さったのですが、ベアテの脳内再生余裕のぶっ飛び具合も好きです。

百合はまだ触れたことがないけど美しいものは好き、シェイクスピアや文学作品で見る友人同士のクソデカ感情が好き、という人に全力でおすすめしたいです。

細部の描写まで全てが美しく、設定が作りこまれているので「現実に引き戻される」ということがありません。丁寧な分お話は長いですが、むしろその丁寧さで紙の本をのめりこんで読むタイプの人を直撃するお話だと思います。

激重な関係性に比例するくらいのハードカバーで書籍化してほしい。

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