『その日、僕は妖狐に拾われた』 たんぺん

白河悠馬

授業参観

注意。このお話は、本編の少年時代編の後日談になります。

第1話 紺①

「授業参観、じゃと?」


 五月のゴールデンウィーク明け。

 自宅の居間で裁縫をしていた紺は、息子の真之から一枚のプリントを受け取った。そこに書かれていたのは、「授業参観の案内」。さらに読み進めてみると、どうやら再来週の木曜日に行われる予定であるらしい。


 小学校から帰宅したばかりの真之は、どこか申し訳なさそうに上目遣いで紺の顔を見ている。彼女が愛するこの息子は、何かと遠慮しがちな少年なのだ。二人が親子になって半年が経過しようとしているが、未だにそこは慣れないようだった。


「えっと、紺さんも忙しいでしょうし」

「何を言う。このように大事な行事、放っておくわけがなかろう! せっかくお主が勉学に励んでいる姿を見学できるのじゃからな」


 紺は快活に笑い、真之の頭を優しく撫でる。恥ずかしそうに頬を赤く染める真之だが、されるがままだ。


「さて、そうと決まれば、当日に着ていく服を選ばねばな。下手な格好をしていけば、お主の恥にもなりかねん」


 鼻歌まじりで紺は立ち上がり、軽やかな足取りで自室へと向かった。

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