第二話


二人の女の子、亜紀と真樹。

仲の良かった二人が、呆気なく普通の女子学生の関係に。

理由は、男。ありきたりの理由。

二人の友情を分けてしまった原因の男子生徒、崇。

崇は真樹に好意を持ち告白までしたが、結果的に亜紀と付き合う事に。


思い通りになった亜紀は、恋に夢中。


恋と友情をはかりにかけ、自ら恋から逃げた真樹は…… 恋と友情を失い悲しい毎日。


小さな田舎町、嫌でも亜紀と崇の楽しそうな毎日が目に入る。

亜紀は行動的な女子。

真樹は行動する前に考えてしまう女子。


微妙な性格の違いで、お互いの優先順位も違う。そのせいもあり真樹は、悔しさを何処にも誰にもぶつける事が出来なかった。


しかし若い男女。


移り気と言うか、若いからこそ気持ちが不安定。同い年のコミュニティだからこそ見栄やプライドも出て来る。

初めは、仲良く良い付き合いが出来ていた亜紀と崇だが…… 徐々に。


亜紀には、もう一つ理由はあった。


それは、真樹の存在。

崇が真樹に好意を持っていた事を知っていたし、真樹は他の女子とは違う存在だった事が亜紀が悩む原因だった。


亜紀にとっては、崇と一緒にいても何処か真樹の影を感じていた。

真樹の影が…… 亜紀を不安にさせ、崇との関係が少しずつ崩れていった。


無論、真樹には何も関係ない事。

真樹は、静かに亜紀と崇の仲を見守っていただけ。


亜紀自身、恋に夢中だったので忘れていたが、やはり亜紀にとっても真樹は……

大事な存在。


ただそれに気付くのは、今では無く……



時が進み。


高校生になっていた。


亜紀も真樹も崇も同じ高校。

しかし亜紀と崇は既に、別れていた。


高校で新しく友人が出来た事もあり、崇と別れた亜紀だが、真樹とは仲が戻らなかった。


二年になった時、真樹は付き合う。

……崇と。

元々は相思相愛の仲。

ごく自然に、お付き合いできた。

一気に楽しく素敵な毎日。

高校生活が明るくなった。

それなりに長く付き合いも続いた。


その仲の良い二人を見た亜紀は、辛かった。自分も崇と付き合っていたのに、遥かに真樹と崇の仲が良く見え、その結果亜紀は より真樹を毛嫌う様になった。


真樹も楽しい毎日だったが、たまに亜紀の姿を見ると…… 辛く、自分だけが幸せな事が……

少しずつ自分を卑下するようになった。


高校生活も終盤あたり。

真樹は崇と別れる事に。

直接的な理由は、崇の浮気。浮気というより別の女の子に乗り換えた。下級生の子に。


ただ真樹は、すんなり受け入れる。真樹自身、段々と崇といるだけではどこか……

つまらない様な、何かが足りない様な物足りなさを感じていたから。


お互いに進路も決まった冬の日、バッタリと亜紀と真樹が出会った。

愛染橋の入り口で。

辺りは夕方の時間だが既に日は落ち、暗い橋の上で。

久々に会話を交わし二人で橋を渡る。


「崇と何で別れたの? 」

亜紀が唐突に訊く。


「何でって、私が振られただけだよ。他の子に気持ちが移っただけ」


「下級生の子に取られて悔しくないの?せっかく崇と付き合えたのに」


「しょうがない…… し。でもいい思い出できたし、もういいの! 」

崇の事は、スパッと終わった感じに答えた真樹。


「亜紀は…… 卒業後は…… 」


「一応進学。真樹は大学でしょ! 」


「うん。離れた所いくの? 亜紀は」


「そうだね。お陰で真樹とも顔合わせなくて…… 済むよ」


「…… ごめんね」

何故か真樹は、謝る。


「謝られる事、されてないけど? 」


橋を渡り終える時、

「じゃ、元気でね」

亜紀がそう言い残し……


亜紀の後ろ姿を真樹は、見ていた。

もう本当に昔の様に戻れないのかと考えながら……


亜紀の姿が暗闇に消え、真樹は一人その場で佇む。

ふと橋の欄干に書いてある

『愛染橋』

を見つめ……


居た堪れない気持ちを…… ぶつける。

『こんな田舎、嫌い』

『こんな名前の橋なんて…… 嫌い』

『亜紀…… なんて…… 嫌い』


『自分が…… すごく…… 嫌い』


寒い冬の冷たい川に架かる橋で……

真樹は、涙を流していた。


亜紀に対してなのか、自分に対してなのか。


それから高校を卒業し、それぞれ別の方向へ。


亜紀と真樹は何年も会う事が無かった。



第二話 終



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