第8話 「真」飲酒運転

玄関を出ると真っ白でコンパクトな車がおいてあった。

彼女は運転席に乗ると私に乗るよう手でジェスチャーしてきた。


「昨日の店まで送る」


そう彼女は言った。

車内は微かにタバコの臭いがしていて気になったが、帰り道の分からない私にとってこれ以上ありがたい提案はなかった。


「ありがたい、ちなみに昨日はここまでどうやって?」

「ほぼ同じ」

「それはつまり君がこの車で私を乗せて帰ったと」


彼女は首を横に振った。


「覚えてない?」


と疑問を乗せて。


「ああ、残念ながら全く」

「あなたが私の車を運転してきた」


おもしろい冗談だと私は思った。


「ありえない私は昨日かなり酔っていた。誰がどうみても飲酒運転だとわかるくらいには」

「警備隊にばれなければ問題ないって自分でいってた」


警備隊は鼻がいい、大小問わずなにか事件や犯罪が起こればすぐに駆けつけてくる。

私はそれを警戒しないほど愚かではない。


「それに私は運転免許証を持っていない、君の家の場所を知らなければ、運転したことさえ一度もない」

「それでもあなたは運転した、家へは私がナビしながら。あと運転も少しだけ慎重すぎることを除けば完璧だった」


彼女は真剣な面持ちでそう断言した。

もし言ったことが嘘なのだとしたら彼女はプロの詐欺師に違いない、そう思えるほどには彼女の言っていることを信じるしかなかった。

結局家へ着いたのは17時を少し過ぎた時間だった。

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