訓練後2

「オルガ様、お待ちしていました。そちらの方は?」


 オルガ様の後ろを20代前半くらいの、見知らぬ人間が付き従っていたため聞いてみる。 すると、一瞬オルガ様は怪訝な表情を浮かべて返答した。


「何言ってるメルス、俺が鍛えてやったガキに決まってんだろ?」


 ガキ……ということは、この人物はミレイなのか。 成長阻害の魔術をかけて亜空間に放り込むと聞いていたが、これほど成長したとなると、相当な時間訓練をしていたのだろう。


 そして案の定、ミレイの劇的な変化に周囲の子供たちが騒ぎ始めた。


「えっ? ミレイ姉さん? ちょっと待って、なんていうか、凄く大人になってる気がするんだけど、胸とか!胸とか!!胸とか!!!」


「…………おっぱい大きい」


「ほんとだ、おっきいー」


 確かに人間の感性で、1カ月でここまで成長すれば反応を示すのも当然なのだろうが、何故あの子たちは胸にしか話題に上げないのだろうか? 長くなった髪とか、高くなった身長とか、もっとあるだろうに。


「私にもよく分からないんだけど、時間の流れが違うところで修業したからかもしれない」


 話題の中心である、ミレイは、久しぶりに会ったであろう子供たちと、会話に花を咲かせるが、胸の事はスルーする。


「なにそれ!! 私もそっちが良かったかも、大人になりたい!!」


「…………わたしも、大きくなりたい」


「なりたいー」


「止めた方が良いわよ、アレは本当に地獄だったし。我ながら、よく数年で帰ってこれたと思うわ」


 子供たちが騒いでいるうちにコッソリとオルガ様に耳打ちする。


「オルガ様、あの人間、数年で帰ってきたと言っていますが、成長阻害の魔法かけてませんでしたっけ。 亜空間で鍛えた時間と見事に一致してるのですけど」


「拷問用の腕輪を与えたからな、記憶が亜空間1回分しかないだけだ。それと、成長阻害の魔法はモチロンかけた。だが亜空間での訓練時間は3000年弱だからな、流石に数年分くらいは体がは成長してしまった」


「そういう事でしたか、3000年って。人間という種族の人生何回分ですかね」


「さあ?だが、多少はマシなレベルにはなったぞ。まだクソ弱いけど」


「まだ弱いんですか」


「ああ、ヤバいくらいに弱い。本来ならばあと5000年は鍛えてやりたいくらいだ」


 人間って成長速度が非常に遅いとは聞いていたが、そこまでとは私も予想外だった。 どんな兵でも3000年かければ多少はまともになるんだけど。 まあ弱小種族だから仕方がないか。


「それよりメルス、歩行の訓練で周辺国家全て回ったんだろ? どうだった?」


「どうだったとは?」


「周辺国家3国の情勢だ、一番クーデターを起こしやすそうな国は何処だ?」


「情勢は3国全ての国がよろしくないためクーデターはどの国でも簡単に起こせると思います」


「よろしくないというのは、どの程度だ?」


「貧富の差が激しく、かつて国の為に尽くした兵士でも使えない者はクビをきられ路上で物乞いをするくらいには悪いですね」


「なるほど……ならば、とりあえずは一番近い国を目指すぞ。そして、移動しながらで良い、もっと詳しく聞かせろ」


「わかりました」


「おいガキ共、いつまで喋ってやがる、出かけるぞ付いてこい」

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