バカのすゝめ

杉本創太

プロローグ

檄文



「俺たちのマシバが、やられた――」



 俺は激怒した。

 メロスもかくやと、俺は猛った。

 親友マシバはもういない。

 マシバは今、はりつけにされたセリヌンティウスだ。

 一人の女を守るため、自らその身を差し出した。

 邪知暴虐の王によって、俺たちのマシバは失われた。


 サコツは怒りに震えている。

 震える拳が泣いている。

 マシバとの愛を守るため、サコツは旅立つ決意を立てた。


 ロッテは空に吠えている。

 優しいロッテがとうとうキレた。

 天パの怒髪が天を衝く。


 ヤブはいつもの間抜け面。

 いつもの倍は抜けている。

 怒れヤブ! おまえの怒りを見せてみろ!


 レイリは横で泣いている。

 デレることなきツンツン少女が、めそめそめそめそ泣いていやがる。

 「鉄の女」と呼ばれたレイリも、所詮は一人の人間だった。

 一人の恋する乙女だった。

 自分のために犠牲になった、男のために泣いている。



 かくなる上は戦争だ。

 この手にマシバを取り戻す!



 筆頭「カリスマ」俺。


 無敵「アーミー」サコツ。


 堅気「マスコット」ロッテ。


 ポンコツ「ブレーン」ヤブ。


 紅一点「アイドル」レイリ。




 ここに集いし我ら五人。

 

 逆巻く疾風怒濤となりて――


 邪知暴虐の王を討つ!


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