14:研究施設

  《研究施設》



「天体望遠鏡が欲しいですね。」

「小さなものでは意味がない。大きなものを建造しないと。」

「現状では予算的に厳しいですね。」

「大きなものを作るならば高い山の山頂かな。」

「地球の大気は邪魔ですね。」

「どうせなら宇宙に作りたいですね。」


「ヒューマンが作った宇宙望遠鏡は、まだ軌道上にありますか?」

「記録によれば軌道が低すぎましたからね。」

「大気摩擦で減速して落ちましたか。」

「落ちたでしょうね。落ちる設計なのかもしれない。」

「ほんの僅かな空気抵抗を受ける軌道ですね。」

「コストの問題か、数十年だけ落ちなければいいという考えか。」

「耐久年数が過ぎたら大気圏で焼却する最初からの計画か。」

「どっちにしろ耐久年数的に駄目なんですね。」


「新しく月に作るのはどうでしょう。」

「良いアイディアではないかと。」


「医療研究的には、無重力の実験施設が欲しいです。」

「ヒューマンが作ってましたか?」

「大気圏スレスレを飛んでいた宇宙ステーションですね。」

「落ちましたね。」


「昔過ぎますし、できれば新しく作りたいですね。」

「無重力だけではなく、0Gから1Gぐらいまであると嬉しいですね。」

「宇宙空間で実験施設を回し、遠心力で可能です。」

「回転が速すぎませんか?」

「では全長を長くしましょう。」


「重量的に、地球から打ち上げるのは大変そうですね。」

「月で建造しますか。」

「月で作るのならば、大型の惑星探査船を作る場所も欲しいですね。」

「労働者が必要ですね。」

「では月の都市から作りましょう。」


「月で作った長い実験施設を地球軌道上で回転させ、遠心力で0Gから1Gを。」

「ではその施設の横に宇宙望遠鏡を浮かべましょう。」

「異議なしです。」

「では何から始めましょう。」


「ヒューマンが作った宇宙ロケットの再現からですね。」

「軍用ミサイルは使えますか?」

「大気圏外まで行けるようなものは開発されていません。」

「大陸間弾道弾は作りませんでしたからね。」

「地下都市には効果が薄いですからね。」


「では大気圏外に行けるロケットを作るところから始めましょう。」


「予算が足りませんね。」

「予算を増やす為の根回しをやりますよ。」

「戦争が終わりましたので経済が停滞しますね。」

「経済のことなら私に任せていただきたい。」


「ヒューマンの映画ブームが来ます。」

「軍事予算が浮きますから他に回して経済を回復させます。」

「好景気を作り出すのは私も得意ですよ。」

「長期的には様々なものを新規に開発して特許料で運用したい。」


「文明レベルが足りません。技術が足りません。」

「ヒューマンの映画にヒントを沢山もらいました。」

「可能なものがいくつもあります。」

「しかし技術者が足りません。開発に時間がかかります。」


「機械工学などの専門家が必要ですね、多くの分野の。」

「できれば世界1位の。」


「能力検査の項目を増やさないといけませんね。」

「25人では人手が足りませんね。」

「500人以上は欲しいですね。」


「能力検査の項目と試験内容は私たちが作ると良いでしょう。」

「それでは私たちが必ず1位になりますが。」


「試験内容は上位5名が作った500問の中からランダムにしましょう。」

「では次回は実験としてその方式で。」


「200項目で25人です。500人以上にしたいです。」

「500人以上になる為の能力検査の項目数。少しお待ちを。」

「何でもいいわけではありませんよ。」

「必要になりそうな技術のリストを。」


「棒高跳びの1位とかは要りませんよ。」

「総合運動能力の1位ですが、棒高跳びも世界記録を持ってます。」

「失礼しました。」


「数学系の1位はもういるんですが、実務系が欲しいですね。」

「総務の1位とか経理の1位とか雑務の1位とか、そんな人が存在すればですが。」

「存在するんじゃないですかね、総務や雑務はどうやってテストすればいいか分かりませんが。」

「雑務に関しては、普通のワーカーさんを雇いましょう。」


「無理に増やそうとしなくてもいいですよね。」

「いきなり500人じゃなくていいです。徐々に増やす感じで。」


「この先のすべての工程を考えると・・・」


「寿命が足りませんね。」


「寿命を延ばす研究も同時進行でお願いします。」


「出来れば早めに。」


 目標は決まった。

 目標が決まれば、その為に何をすればいいのかは分かる。だが、時間が最大の敵だった。


 すべての物ごとに時間を要した。

 計画を進めるために、様々な場所で様々な人を説得しなければならなかった。

 1位の言うことを素直に聞いてくれる人は少なかった。


 愚かな人々はこちらの要請に難癖をつけ、頑なに拒否し、その度に説得力1位が出ていかなければならなかった。


 しかしそれでも、頑なに拒否を続け、時間だけが浪費されていった。





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