10:戦争

 【発掘レンガ】


652910 第8艦隊 空母シルバラード 

    記録係 トニー・ダルメシアン


戦闘開始日時652年8月28日11時00分

戦闘終了日時652年8月28日14時36分

戦闘地域 アトランティックオーシャン エリア35


艦隊戦力 

空母 シルバラード級1 

巡洋艦 コルベット級5 

駆逐艦 マスタング級8 

艦載戦闘機 ワイルドスパイダー22 ワイルドバット6 ワイルドランタン6


アフリカ海軍戦力 

船影20 空母1 おそらく駆逐艦19 戦闘機 おそらく36


新開発中距離ミサイル サイクロプスのパワーは絶大 

敵駆逐艦10をサイクロプスで撃破


ワイルドランタンの爆撃 撃破数 駆逐艦2

コルベット級 マスタング級 砲撃 魚雷 敵駆逐艦 撃破総数8 空母1含む

ワイルドスパイダー ワイルドバット 敵戦闘機 全撃破


14時36分 敵軍 全滅により戦闘終了


第8艦隊 被害

撃沈 コルベット級3 マスタング級5

撃墜 ワイルドスパイダー8 ワイルドバット2 ワイルドランタン6



  《戦争》


 「なにこの大きいの。」ツキモトがオオタに聞いた。

 今日はオオタの部屋である。


 壁際の棚に50センチほどの大きな空母のナノファモデルが置いてある。

「見てわからんかね、どう見ても空母シルバラードじゃないか。」オオタが自慢げに言った。「通販で買っちゃった。」


「触っていいやつ?」ツキモトは近寄ってジロジロと模型を見ながら聞いた。

「あーちょっと待って。」オオタが模型に手を伸ばす。「ここ取れるんだ。」

 そう言って空母の滑走路部分を両手で持ち、ゆっくりと持ち上げた。


「おお、滑走路の下も内部まで作られてるんだ。」ツキモトがちょっと驚いた。

 内部には搭載する戦闘機の格納庫が精密に再現されている。


「滑走路じゃなくて、飛行甲板な。」オオタが取り外した飛行甲板を持ちながら訂正した。「艦載機を格納庫から飛行甲板に上げるためのエレベーターも、ここ押すと動く。」


「エレベーター、押していいか?」ツキモトは答えを聞く前に小さなボタンを押している。「おお、本当だ。」


 エレベーターがジーという小さな音とともに上昇した。

「な、よく出来てるだろ。」オオタが自慢げに言った。


「ところでオオタ、エレベーターに乗せる艦載機がありませんが。」ツキモトが核心を突く発言をした。

「うん、別売り。」オオタが言った。

「ハハハ。」ツキモトが笑った。

「買ってよ。」オオタが言った。

「嫌。」ツキモトが拒否した。



 レンガ文明はずっと戦争をしていたようだ。

 彼らの科学の発展スピードは早いが、それは技術研究の早さではなく、古代遺跡に残るヒューマンの文明の解読による早さである。

 それを後押ししたのが、長年の戦争だった。


 彼らは1000年ほどの歴史だが、最初の500年を大陸内での戦争に費やし、後半400年ほどを大西洋を挟んだ大陸間戦争に費やした。


 幸いなことに彼らは、ヒューマンの最強武器である大陸間弾道弾の開発に成功しなかった。その技術を手にしたのは戦争終結後、900年頃だった。


 我々も、暦を作れる知識レベルになってから10000年ほど経つが、2000年頃まで戦争が多かった。


 石器、鉄器から始まり、電子戦まで、レンガ文明と同じような歴史を辿った。必死にレンガ文明の残した技術を開発し、レンガ文明を追い越し、科学は発展していった。


 だが、彼らと大きく違うところが一つある。それは、レンガ文明が石油を使い果たしてしまったことだった。

 我々にはガソリンエンジンを作る技術はあったが、無駄遣い出来るほどのガソリンは無かったのだ。


 我々は電気に頼るしかなかった。我々の発電技術は進歩し、電気モーター技術が文明を支えた。

 石炭発電所、地熱発電所、太陽光発電所が各地に作られた。


 ヒューマンが開発できなかった高度なマグネシウム電池技術が確立されると、古いバッテリー技術に取って代わった。


 核分裂発電は使わなかった。ヒューマンとビースターが残した原子力発電所は、世界各地に残っていた。

 それらは今でも高い放射線レベルを維持していた。


 我々の2000年の長きにわたる戦争を終わらせたのは、意外なものだった。


 それはヒューマンが11万年前に残した映画である。彼らヒューマンがプラスチックのディスクにデータを記録する文化だったのは分かっていた。

 しかし11万年の時の流れの中で、記録された金属のプレートは劣化し、データは全て消えていた。


 我々には、その時まで読み取ることが出来なかった。


 戦争終結の少し前、1998年の10月にその技術は開発に成功した。


 超極細低温微弱光線型プラスチック側凹凸屈折感知スキャナー。正式名称は長ったらしいが、ヒューマンの記録ディスクスキャナーだ。


 もしも、保存状態の最高に良いヒューマンのディスク型記録メディアが発見されたら読み取れる可能性がある、という物だった。





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