第12回 大地をわたる声を聞け

軽い気持ちで始めたこの企画も、12回目を迎えました。当初は5回くらいで終了する予定だったのですが。


今回ご紹介するのは、『大地をわたる声を聞け』。作者は小林めぐみ先生です。


義母に虐げられながら(毎回仕返しはきっちりしていますが)、暮らしていた主人公の少女。ある日、彼女のもとに王宮から使者がやって来ます。その使者によれば、主人公は先代の王の娘、つまり王族であるとのことです。王宮に招くと言う使者に対し、主人公は最愛の義妹を一緒に連れて行くなら、という条件を出し、無理やりOKをもらい。現在の王に謁見した彼女は、意識を失ってしまいます。次に目覚めたときには、牢屋の中。どうにかして脱出しますが、次に知るのは、王都の住人全員が神隠しに遭ってしまったということ。つまり、主人公と一緒に王宮に来ていた義妹も行方不明。義妹を探し出すため、主人公は手がかりを追います。その先で知ったのは、神隠しの犯人である魔導師。魔導師は、神隠しをやめてほしければ、王族を人質によこせ、と言っていたようです。そこで現在の王が取った策が、先代王の娘である主人公を王族として人質にする、というものでした。


魔導師を追っていくにつれて明らかになっていく、残酷な真実の数々。かつて大陸に一大帝国を築いたアミュール。その末裔が、現在の四王国(主人公の国はそのうちの一国)でした。各国の王族に流れるアミュールの血が、物語の鍵となるのです。そこに大きな罪がありました。大陸全土を巻き込むほどに。


……とヘビィな真実を知っていくのですが、ですが、勝ち気な性格の主人公は、少しもへこたれません。復讐、そして義妹を救う手段を探して突き進みます。彼女の明るさのおかげで、ページをめくるのが全く苦になりません。ラストの展開には賛否両論あるのではないかと思います、うーん……。でも、白河は肯定派。


白河のお気に入りキャラは、アンジェラ。長い銀髪が印象的で、凛とした綺麗な女性です。彼女についての説明は、ほとんどがネタバレになりそうなので、ここではやめておきます。


本作は上下巻の構成で成り立っています。読後にこの世界観が好きになった人は、違う時代で同じ世界を舞台にした『君が夢、河を上りて』(こちらも上下巻)も合わせて読んでみると、ちょっとした裏話が分かって楽しいですよ。もちろん、「読んでいないと、話がさっぱり分からない!」ということはないので、ご安心を。


本作は、1995年に発売された本です。今読むと、「古臭い」という印象を持たれる方もいらっしゃるかと思います。でも、それを「古き良き作品」として受け入れることができたら、楽しんでいただけるのではないかと。

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