白河悠馬の、ちょっと昔のラノベをオススメ

白河悠馬

第01回 日帰りクエスト

 異世界転移ものが近ごろのラノベのブームだそうですが、この作品はその祖先ともいうべきラノベでしょう。1巻が発売されたのはなんと、1993年です。作者は、『スレイヤーズ』でお馴染みの神坂一先生。


 爬虫類のような見た目の竜人、ギオラムの侵攻のせいで、存亡の危機にあるファインネル王国。王家が異世界に助力を求め、そのサンプルとして召喚されたのが主人公のエリ。彼女はただの女子高生なので戦力になるはずがなく、どうしたものかと王家が扱いに困ります。ギオラムの侵攻のせいで、塩や香辛料などの物資が不足しているのを知ったエリは、それらを商品として売るという手に出ます。その商売を利用して、彼女は定期的に異世界へ召喚され、気ままに旅行するのでした。


 作者ご自身が後書きでおっしゃっているように、エリはRPGで例えるなら「遊び人レベル1」。それも、レベルは最終巻まで上がることがありません。なにしろ、ただの女子高生ですからね。


 この作品の見所は、何の力も持たない女子高生の視点を通して、異文化コミュニケーションを行うことです。中世ヨーロッパ風のファインネル王国との異文化は勿論。後々にエリは敵勢力であるギオラムに拉致され、奴隷として売られることになります。そこで彼女を買った女学者のギオラムに、人間の研究材料として触れ合います。そういった「現代日本との世界や種族の違い」が丁寧に描かれているのですね。エリが前向きというか強引というか、そうしたお調子者かつ勝ち気な性格なので、異文化に首を突っ込み、読者に理解させやすいよう工夫されています。


 小説版は角川スニーカー文庫から出版され、全4巻。漫画版も出ています。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る