VS 魔女っ娘レフィエ+賢者(♂) の絶望 その1

 魔法と学術の都バティスト。

 オレのいた異世界の魔法使いは、みんなこの街で学ぶらしい。


 パーティメンバーのロリな魔女っ娘レフィエと賢者(おとこ)も、この街の出身だった。


 共に冒険の日日を過ごした大切な仲間達だ。

 彼らの魔法による支援なしに魔王戦の勝利はなかっただろう。


 二人が付き合っていたなんて、しらなかったけどさ……はは。


 パーティ内恋愛、禁止しとけばよかった。


 その街を見下ろす丘にある、豪奢な屋敷の部屋に二人はいた。

 ベットに腰をかけてワイングラスを傾けている。


 賢者(♂)がレフィエにワインを口移しをする。


 賢者(♂)が口に含んだ量が多かったのだろう、魔女っ娘のまだ幼い唇から白い喉元にかけて漏れ流れた、葡萄の紅黒い液体がなんとも艶めかしい。


 ……全裸で。


 くそがぁ。


 隣にいるパイセンもやれやれといった顔をしている。


 俺は思い出話でもしたかっただけなのに。ロリっ娘を相手に、なんというふしだらな関係なんだ! いかがわしい行為をしやがって!!


 とはいえ、あれから半年が経っている。


 元の世界地球ならまだしも、ここは異世界。きほん食糧事情が悪いし、医療も未発達だから平均寿命も短い。「15歳で大人」だと言っていたから仕方が無い……。


 って、レフィエ13歳だった気が……。


 どのみちアウトじゃんか!! ふっざけんなよ! この腐れ賢者(♂)め!! 逮捕ですよ、タイーホですよ!!



「じゃあ、ベッドにいこうか」

「は、はい。あの……」

「どうしたんだい?」

「……やくそく。せんせい……次の魔術士試験での合格を。故郷の両親が、村のみんなの期待があるんです。次の試験で落第をしたら……これいじょう高い学費を捻出する余裕がないんです――」


 あれ? せんせい……って、レフィエ? 何をいって。あれれ?


「わかっている。わたしを誰だと思っているんだい? バティスト第一塔学長の権限は絶対なのだよ。すべて任せ給え。だが……きみの頑張りしだいだ。いまからの、ね」そういって強引に少女を抱き伏せ、獣が貪るようにのし掛かる賢者(♂)ァ!!

「ん、んっ、……ああっ」


「!? って、この女の子。レフィエちゃう! 君、だれーーーーーー!!!!」


 ――つい叫んでしまった。しまった!


「? うん、誰だ!!」「だ、だれ!!」


「お、オレは勇者タカユキだ! 賢者(♂)! よもやこの顔、わすれたとはいわせんぞ!!」


「!? タカユキ? おまえ、元の世界とやらに還ったはずでは? なぜ、ここに?」


「パイセンもいまーーす」


 オレの背後で手をヒラッヒラさせるパイセン。じゃっかん投げやりだ。


 突然の侵入者に驚いて、脱いだローブを抱えて走り去る少女。


 男児の視界に入らざるをえない、まだ育ちきらぬ少女のない胸に「これから育つんだよ」という暖かな眼差しを向ける。


 ……ちゃう、「無事に逃げるんだよ」


 こうして、部屋にはオレとパイセン。

 そして悪党の賢者(♂)が残された。



 ⭐



「そんなことよりも、レフィエはどこだ! つうか、お前! レフィエという相手がいながら、なにしてんだよ!」


「レフィエ。ああ、か……。そういえばタカユキは、彼女に気があったようでしたね。聞けばに告白までしたとか」


「な、なにが悪いんだよ! べつにいいだろ! うっさいわ!」


「ふむう……ちょうどいい機会か。いいでしょう。ついてきてください」


「どこに行くんだよ?」


「黙ってついてきてください。会わせてあげますよ、……いえ、彼女レフィエにね。くふふ」



 ⭐



 賢者(♂)に連れられ、屋敷のなかをすすみ地下へと至った。


 たいまつを手に、長く長く続く石造りの階段を下る。地上と地下とではまるで雰囲気の違う建造物だ。おそらく、つくられた時代そのものが異なるのだろう。ダンジョンのようだ。


「いぜんタカユキには、私の研究。の話をしましたよね?」


「あ、ああ……そうだったかな」


 おぼろげにそんな記憶がある。興味がなかったからスルーしたけど。


「魔王軍四天王の一体が魔界スライムで不死でした。その彼の体組織を素材として持ち帰っていたのです。他の四天王や魔物の分もね……。そもそも私が勇者パーティ――タカユキ達に協力したのは自身の研究のためでした。研究に必要な素材を効率よく集めるために冒険にでたのです。……そうして、おかげさまで究極完全魔法生命体の種はできたのですが、育てるための環境がひつようでした。そのためには莫大な魔力の櫃が必要になるのですが、設備として整える為には費用も時間もかかりすぎる。我がバティストの総力を結集していてもね……。そこでわたしは考えました。を流用すればいいと」


「その話。じつに興味深いですね。とはなんですか?」


 パイセンが身を乗り出した。オレにはついていけない話だ。


「人間の女性ですよ。種を植え付けるのなら女性の身体がいい。でも、ただの女性じゃダメでした。たとえるなら、魔王を倒せるぐらいの魔力をもつ魔法使いの女性がいたら適任だと、ね」


「…………」


 賢者(♂)の長い話に付き合いながら、しばらく進むと、古く重厚な鉄製扉の前にでた。


 ――ギギィ。と軋む扉を押し開くと、そこにはドラゴンが余裕で住めそうな巨大な地下空間が広がっていた。



 ⭐



 賢者(♂)が明かりの魔法を唱えると、巨大な空間にうかびあがったのは、うごめく無数の触手や棘をもった異様で不気味な生命体の姿。


 蛸をベースにミミズとスライムを融合させたような醜悪な巨大生物がいた。背? には飛蝗バッタのような昆虫系の羽まで生えている。


 ――ゴキュゴキュ。という、呼吸音のような……心臓の鼓動のような……くぐもったような音ばかりが響く。


 この世のものとは思えない。という表現がこれほど似合う生物はいないだろう。数々の魔物と対峙してきたオレでも戦慄を禁じ得ない化物だ。


 うっわ……。これ……何トゥルフだよ。


「レフィエは、あなたには勿体ないすばらしい女性でした……」


 そうだ、レフィエ。いまはオレの魔女っ娘レフィエを探しているんだった。さっきから意味不明なことをいいやがって……。


「おい、いいかげん答えろ賢者(♂)! レフィエはどこにいる?」

 

「なにをいっているのですか勇者ァ! レフィエなら、先ほどから、あなたの目の前にィイイイ! 居るでは、ないですかァアアアアアアア!!!!」



「!? な……なな、なんだってーーーーーーーーーーーーー!!!!」

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