女神墜落~あなたがわたしを好きになるまで~

奈月沙耶

 

プロローグ

 その朝、うるわしの女神さまは、いつものように雲の隙間から下界のようすをご覧になっていました。

 このように下々の者たちの暮らしを見守るのが、この街を守護する女神さまのお勤め。毎朝楽しそうに女神さまは下界を見下ろしていらっしゃいます。


「あっはっは。あのふとっちょめ、偉そうな顔をして歩いているから犬の糞を踏みおったわ。ざまあみろ」


「あの生意気そうな小僧、妹のパンを取ったな。お、親父殿にげんこつ食らっていい気味じゃ」


 うるわしの女神さまは、とてもとても性格が悪いのです。この街の守護神とはとても思えません。

 女神さまの日ごろの振る舞いに頭を悩ませていた父神さまは、このとき決断しました。少しお灸をすえるべきだと。


 そしてそうっと女神さまの背後から近付き、うるわしのそのおからだを、雲の端から蹴り出しておしまいになったのです。女神さまは驚く間もなく下界へ真っ逆さま。


 ああ、うるわしの女神さまはいずこへ…………。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る