月と地球で人々が巡り会い「希望」をつなぐ壮大なSFファンタジー

20XX年。人類は荒廃した地球を捨て、月コロニーへの移住を完了している。

しかし、地球に残る人々もいた。彼らを襲う自然の猛威、病と乾き。文明が崩壊した地球で、人々は神に祈る。その希望の象徴とも言えるのが、主人公の少年ナギだ。

ナギは「神の使い」であるという自らの役割に悩みながら大人になっていく。

一方、月コロニーは神なき世界。最適化されたプラントで培養される動物や植物。遺伝子操作された「デザイナーズ・ベイビー」と呼ばれる子供たち。そこで生まれ育ち、罪人として地球(月の民の流刑地になっている)に送られることとなった青年トワ。

彼はあるものを地球に持ち込んだ。人類の希望となるかも知れない「種」を——。

この作者さんは、思い描いた世界観を文章で表現することにおいて、カクヨムでも屈指の人ではないかと思います。自然に支配されながらも、所々に文明の残骸がある地球。砂嵐の場面では、視界が閉ざされていく映像が目に浮かぶよう。月で生まれた人間が初めて地球に降り立つ場面では、その未知なる身体感覚を疑似体験できるようでした。

家族の物語としても二転三転、王道を行きながらも飽きさせない工夫があります。

神とテクノロジーが分離された2つの世界が再び交わるとき、何が起こるのか?

今から結末がとても楽しみな作品です。

その他のおすすめレビュー

純太さんの他のおすすめレビュー227