ものがたりのうた

「初めての恋にお別れのキスを」

僕と君の夏

僕と君の夏は、いつも笑顔だった

君が笑うだけで、僕は幸せだった


積乱雲と蝉時雨、校門前の急な坂

君の親友だと言い張っていた僕と

僕を親友だと信じていた君の間を

ひやかすような風が駆けていった


精一杯膨らんだ制服の白いシャツ

君は「帆船みたい」と笑っていた


可愛い君の後ろ姿を見ていたくて

わざと数歩遅れて歩いていた僕に

笑いながら「早くおいでよ」って

振り返る君はいつも眩しかったな


未来の果てまで一緒にいたかった

いつか想いは届くと信じてたのに


臆病な僕の手をすり抜けていって

あの日の僕らが知らなかった人と

幸せになってしまった君のことを

僕はずっと抱きしめたかったんだ


あの夏の君は、今も僕だけのもの

僕と君の夏、いつも笑顔だった夏


(初出:2019/9/25)


Character:五月尊

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