気まぐれ屋に捧げる詩

心が真っ黒になってゆくよ

ねぇ

こっち向いて

嘘の笑顔はいらないから

冷ややかな視線でかまわない

バカだねって言われたいんだ

無視しないで


楽しそうな君を眺めてる

この席からはよく見えるから

同じ教室の最前列

君の席を囲む連中は

だらしない顔をして笑ってる

腹立たしいね

どうしてそこに行けないんだろう


テストで満点取ったって

バスケでシュートを決めたって

流行りの歌を歌ったって

君は興味なさそうに欠伸をしてた

そんなところも可愛かった

こっちを向いてくれるのは

キスをする時だけだった

ただの気まぐれだとわかってた


未来も自我も純潔も愛も

何もかも君に捧げたんだ

期間限定の乱痴気騒ぎ

衝突して終了のランデヴー

永遠なんて信じないけど

終わるのが早すぎやしないか

何をすればもう一度

こっちを向いてくれるんだろう


心が空っぽになってゆくよ

ねぇ

こっち向いて

嘘の言葉はいらないから

柔らかな視線を投げかけて

バカだよって返したいんだ

だから聞いて


ねぇ

こっちを向いてよ

気まぐれでもかまわないから

誰にも見つからない場所で

こっそりとキスの続きをしよう

思い出して


忘れないで


覚えていて


ひとりにしないで


(初出:2019/8/20)

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