砂漠の駱駝

 広い砂漠を旅する時、星を目印にするのだと言う。


 私は自分が、砂漠を旅する場面を想像してみた。

 ――駱駝の背に揺られながら、行き先も決めず遭難。

 それ、ダメだよね。楽しそうではあるけれど。

 ――星に気を取られて、流砂に突っ込む。

 ありそう。地の底まで落っこちて、帰って来れなくなっちゃう。

 ――方角を確認する為の星に向かって歩いてしまう。

 ああ、きっと一番やらかすのはこれだ。これだけは避けたい。


 駱駝の背に乗ってみる。遭難ルート。

 ――お客さん、どちらまで?

 行き先はまだ決めていないんです。

 ――もう歩き出してるのに、困りますよ。初乗り運賃はちょっと。

 じゃあ、とりあえず、砂漠を一周して下さい。

 ――結構、お時間かかりますが。

 構いません。ゆっくりと、砂漠の景色が見たいんです。


 駱駝は言う。

 良い旅になりますように、と。

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