2-11 試験2日目 その6 確認2

シャーロットの確認の次に、クリスティーナを呼んだ。


クリスティーナは紅茶を静かに飲み干し、そそくさとこちらに向かってきた。薄いローブが風でふわっと浮き、素肌が見え隠れする。思わず見とれてしまう。


僕は自分を取り戻し、彼女に声をかけ、10メートルくらい離れたところに立ち止まるように言った。


「では、僕に向かって、なんでも良いので魔法を撃ってみて」

「え?大丈夫?本当にケガするわよ。」

「心配しなくても大丈夫。さっきのシャーロットと同じだよ。」

「シャーロットに何かしたの?」


なんだよ、シャーロットと話しをしている時に、話に割り込んできたので、分かってるのかと思っていたら、見ていないんかい!!


「僕のことは心配しなくてもいいから、やってみて。」

「昨日、今日を見る限り、君は何かすごいんだね。じゃあ、遠慮なく。」


クリスティーナは魔法の詠唱を始めた。見る見るうちに魔法が構築されている。何度も見たが、かなりの速さだ。


「ファイヤーボール!」


火の玉が僕に向かってきた。この軌道ならば僕に当たる。。。と思いきや、やっぱり1mくらい手前で左に曲がり、後ろの岩にぶつかった。


「やっぱり当たらないわね。不思議よ。じゃあ、違う魔法で」


クリスティーナは再度魔法の詠唱を始めた。今度は違った魔法が瞬時に構築されている。


「アイスニードル!」


氷の刃が僕に向かってくる。そして、今度は左に曲がった。


「うーん、うまくいかないわね。もう一回いい?」

「何度もやっていいよ。」


僕は飛んでくるファイヤーボールやアイスニードルをよく見た。特におかしいところはない。なのに僕を避けるように曲がっていく。


今度は彼女をじっと見た。彼女は真剣に魔法を構築し、放つ。妖艶なところ以外おかしいところはない。。。ん?


「ねえ、クリスティーナ、目の病気とかある?」

「いや、特にないわよ。」

「魔法を相手に撃つのが怖いとか思ったことある?」

「全くないわよ。むしろ当たったらとっても嬉しい!」


なるほど、少しわかった。


「もう一回やってみて。」


クリスティーナは魔法を構築し、放った。そして、僕のほうに魔法が飛んできて・・・彼女はなんと、目をつぶって顔を横に向けていた。そして、向けた方向に魔法が曲がっていたのだ。なるほど、曲がっている理由はそれか。


「OK。休憩しよう。」

「もう終わり?まあいいわ。」


クリスティーナはまだ魔法は使えそうだ。残魔力も結構ありそうだ。彼女はそそくさと戻り、紅茶を作り始めた。

さて、どうしよう。これまたパトリシアに相談するか。


「次はカレンの番だよ、よろしく。」


彼女はティーカップを静かに置き、こちらに来た。


「よろしくお願いします。」


ペコリと頭を下げた。うん、とても感じが良い。


「だれにその挨拶を教えてもらったの?」

「ヤポンの挨拶って聞いたの。だから、誰にも教えてもらってないよ。」


ヤポンマニアか。

カレンは治療士なので、怪我人がいないとあまり意味がない。なので、魔法の確認ではなく、話をすることにした。


「カレンはどうして血が怖いの?」

「どうしてと言われましても。。。」


僕はその原因から解決法が見つからないかなと思い、話を続けてもらう。


「私は昔から、血が怖かったわけではありません。2年前までは・・・そう2年前、大きな地震があったのを覚えていますか。」

「2年前?」

「その時、王都はそれほど被害はありませんでしたが、隣にある小さな村がとても被害が大きいことが分かりました。」


そうだ!確かに、2年前に地震があった。自分がいた村は大したことはなかったが、その後冒険者から、王都に近い村の被害がとても大きかったと言っていたことを思い出した。


「両親と姉は、たまたま離れた街にいたため、王都にいませんでした。よって、王都の教会にいた私や治療士達は、すぐにその村に向かいました。すると、道は崩れ、たくさんの家が崩壊していました。あちこちから悲鳴が上がっていました。」


話を続ける。


「私は治療をするために、けがをした人のところへ向かいました。すると、頭から血を流し、子供を抱えたまま「助けて」と言っている女性を見ました。私はその姿があまりにもショックで、治療士でありながら、そのまま気を失いました。私はその時の光景がどうしても頭から離れなくて・・・血を見るとそれを思い出し、混乱してしまうのです。」


彼女は涙ぐんでいる。完全なトラウマの影響だ。


「私はここの教会を継ぎたくないのはお話ししましたが、今回これに参加したのは別の理由もありまして、少しでもこれを改善して、皆様の役に立ちたいと思って受験したのです。」


カレンは優しいがとても強い。僕はなんとかしてあげたいと思った。

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