第9話

 映画館に着いたのでチケットを買いに行く。思っていたよりも席が埋まっていたが、端っこに二人分空いているスペースがあったのでそこをとることにした。シアターに行く前に、ドリンクを買う。ハンバーガーを食べたばっかりだったのでポップコーンは頼まなかった。僕は少し大人ぶってコーヒーにした。利佳にばれないようにシロップとミルクをたくさん取ったことは秘密だ。

 チケットをスタッフさんに渡して、シアターのほうに行くときにスタッフさんが妙にニヤニヤしていたのが少し気になったが利佳とチケットの席へ向かう。


「そういえば、初めてだよね、二人で映画見に行くのって。昔は映画とかじゃなくて外だったりどっちかの家だったもんね。また、お家に遊びに行ってもいい?」


「もちろんいいよ」


 僕は、利佳にそう答えたが本当はまた遊べるのかと不安で仕方なかった。もし、僕が死んだら利佳は悲しんでくれるのだろうか。そんな僕の気持を置いて上映開始のブザーが鳴った。


 映画は思っていたよりもコメディー多めの内容で楽しく見ることができた。そして迎えたラストシーン。主人公の男の子がヒロインの女の子に今までの気持をすべて伝えている。僕は、勇気を振り絞ってそっと利佳の手を握る。すると、すぐに利佳も僕の手を握り返してくれた。

 僕は利佳のほうに体を向ける。そして、利佳の顔を見つめ。


「ずっと前からあなたのことが好きでした。僕と付き合ってください」


 自分なりに思いを伝えられたと思う。一番近くの席とも少し離れているので多分声は周りに聞こえていないだろう。あとは、利佳の返答を待つだけだ。


「私もたっちゃんのことが好き。大好きだよ」


 その声が聞こえたとき僕は頭の中が真っ白になった。 



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