第5話

 今日は8月20日、コンクールを見に行く約束をしてから僕は毎日音楽室を訪れている。

 コンクールまで後2週間を切っているが利佳は少し苦労しているようだ。


「最近調子はどんな感じ?」


「う〜ん。って感じ」


「それならさ、気分転換にどこか出かけない?」


 俺は、利佳にそう提案してみる。


「練習もあるけど、偶にはいいかな。で、どこ行くの?」


「映画を見に行こうと思ってるだけど、いいかな?」


「なんの映画?」


 その場に行ってから決めようと思っていたので頭の中で考えていると、意外にも利佳から提案してきた。


「たしか〜『告白オーディション』っていうタイトルで、最近話題らしいよ」


「へぇ〜 面白そうな映画だね。じゃあ、それにしようか。みに行くのは明日とかでいい?」


「いいよ。じゃあ、集合は朝の9時にネオンのIOQシネマの前でね」


 あまりにも、集合が早すぎないかと思い質問してみる。


「でも、映画は14時からだよ?」


「映画だけ見るんじゃつまらないじゃん。だから、映画までは2人でお買い物でもしようよ!」


 女子ってやっぱり買い物とか好きなんだな〜


「りょ〜かい」


 話がまとまった所で僕は帰る準備をする。


「もう帰るの?」


「まぁね。一緒かえる?」


「うんっ!」


 ダメ元で誘ってみたら、まさかOKが貰えるとは。人生何があるかわかんないな。


 利佳の準備ができたので音楽室を出て校門へ向かう。


「なんか、たっちゃんと2人で帰るって久しぶりだね」


「たしかに、言われてみるとそうだね」


 利佳の家は僕の家の少し手前だ。だから、利佳の家まで懐かしい思い出話やコンクールへの意気込みなんかを話しながら帰った。話しているとすぐついてしまった。

 正直な話、もう少し利佳と一緒にいたかった。でも、明日会えるからいいかな。


「じゃあ、また明日ね。遅刻しちゃダメなんだからね!」


「はーい」


 と、別れを伝えて家に帰ることにした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る