第2話

 僕は自分の余命がわかる。


 いや、分かってしまった。という方が正しいと思う。みんな、夢を見たことがあるだろう。しかし、僕が見たのはふんわりとした夢やほんわかした夢などではなかった。僕が見たのは悪夢だった。


 この悪夢を見てしまったのは今から3ヶ月前のことだ。その日、僕は事故に遭った。幸い命に別状はなかったものの2日間意識が戻らなかった。


 その2日間で僕は不思議な夢を見た。


 その夢は自分の日常生活を、何日か置きに見たものだった。1日の始まりにまずカレンダーで日付を確認する。そして、日々の日常を送る。


 そして、6ヶ月ほどの日常を見ると僕は意識を、取り戻した。最後の1ヶ月は病院で過ごしていたのがとても、気になった。


 僕は病院を退院した後、常に「既視感」つまり「デジャヴ」を感じるようになった。僕は、夢の中で見たことを覚えてる限りノートに書き出した。日付も合わせて。


 そこで、僕は気付いてしまった。僕は、悪夢を見ていた事に。 なぜなら、ノートに書いた事と、毎日起こる出来事が必ず一致するからだ。


 例えば、今日の授業で先生に当てられて全く関係のないことを答えて恥をかいたり、自動販売機でジュースを買おうとしたらスロットが当たってもう一本ジュースが買えたなどの予想ができようもないことが次々と当たって行くのだ。しかも、その場面になると夢のことが思い出そうとしても、もやがかかったように思い出せなくなる。


 自分が見た悪夢が本当なら、僕はあと数ヶ月で命が尽きる。僕が悪夢の中で退院する前に目を覚ましたのはおそらく、僕がそこでこの世を去り未来が途切れてしまったからだろう。


 これを、ただの偶然だと思うことは容易い。だが、僕にはまだしたい事が山ほどある。それに、利佳に自分の思いを伝えてすらない。この状況で僕は死にたくない。だから、伝えよう。利佳に好きだと。



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