オトギネシス

小村ユキチ

むかしむかし

 むかしむかしのある日のこと。

 <姫と魔女の和解>により全ての女に神秘と魔が与えられ、男たちは為す術もなく持たざるものの地位へと蹴り落とされてしまいました。

 哀れな男たちはただ自らの自由を女たちに乞う他ありませんでしたが、女たちは慈悲深く、彼らにも十分な権利を保証してあげました。

 それでもなお、男たちは欲深く浅はかで、

 与えられた自由の中でも最も暴力的で低俗な階級制度の内に、自ら進んで堕ちていったのです。

 望んだのはハーレム。

 叶えるのは女。

 不相応な欲望を、叶うことよりも夢見ることを望んでいるかのような愚かさを、それでも貴き姫君たちは暖かく見守っていました。

「かぼちゃ組」はシンデレラ。

「りんご組」は白雪姫。

「野いちご組」はグレーテル。

「ちしゃ組」はラプンツェル。

 そして、いばら姫と赤ずきん、暗き夜を支配する名もなき姫たち。

 魔法は夜の0時まで。

 シマもシノギもケジメもホトケも、

 全てはあの娘に捧げるお菓子のために。

 そんなヤクザのおとぎ話。

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