第2話

「やっぱり無理!」


木曜日の昼休み。

花火大会まであと1日。

まだ相手は見つかっていない。



「もう、諦めれば?」


「絶対いや!」



今日は加奈が彼氏とお弁当を食べているため、椎菜は奏太と2人で作戦会議をしている。



「そもそも、お前他のクラスに友達いないだろ。」


「い、いるもん! 2、3人は…。」


「で、どうだったんだよ?」


結果は分かるけどと奏太は付け足しながら聞いた。


「分かるなら、もういいでしょ!」



椎菜が頬を膨らませる。まるで幼稚園児のようだ。


「その顔やめろ、ガキ。」


「ちょっと!ガキって言うな!」



くだらない喧嘩も止める人がいないため、決着がつかない。


「そーゆーこと言ってるから子供っぽいんだよ、気づけバカ。 おっ、唐揚げ旨そう! もーらいっ!」



「バカって言うなバカ、私の方が成績いいから!って唐揚げとっといてたのにー!」



すでに慣れているのかクラスメイトたちは2人を暖かく見守り続ける。


そんな時、1人の生徒が椎菜を呼んだ。


「椎菜! お客さんだよー。」


「はーい! 奏太、後で覚えててよ!」


椎菜は、親指を下に向けながら捨て台詞を残し、彼女を呼んだ客の方へ向かった。


「あんなところも可愛いんだよな……」


「はっ!?」


「なーんてね! もしかして本当に思ってた?」


いつのまにか帰ってきてた加奈が奏太をからかう。


「そんなこと思ってない!」


顔を少し赤らめながら、奏太は加奈に向かって声を荒げた。


「いいのー? いま椎菜を呼び出したの男子だったけどー?」


「…それが?」


「あの男子、顔赤かったから告白だったりしてー。」


明らかに動揺している奏太を見て、加奈は再度聞く。


「本当にいいの?」


また、声を荒げようとした奏太は加奈の真剣な顔を見て、思わず言葉を引っ込めた。


「仕方ないだろ。今の関係を壊す度胸のない俺に、止める権利なんてない。」


「…そうだね、ごめん。今の忘れて。」


「いや…。」



その後、俺たちは授業が始まるまで黙ったままだった。

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