失われた一年

ツヨシ

第1話

友人宅を訪ねて、とりとめのない会話をしていた。


いつもの日常だ。


が、そのとき、俺は突然意識を失った。


そして気付いたときには、見知らぬ細い路地に倒れていた。


――ここは、どこだ……。何時の間にこんなところに?


路地を出ると、幹線道路と思えるところに出た。


道路沿いには東京にもあるチェーン店の店や、俺の知らない店が何軒か建っていた。


店の裏側にはいくつかの住宅、そして田畑が広がり、その先には大きな山々が連なっている。


空は少し曇り気味だったが、そのわりには明るく思えた。


空気が澄んでいるというか、東京と比べるとおいしく感じられた。


まわりの風景と合わせてみても、どうやら都会とは言い難い場所のようだ。


俺は歩いた。


あてもなく。


すると幸運なことに、少し歩いただけで交番を見つけた。


通りがかりの人を捕まえて話しをするつもりだったのだが、その前に警官と話すことが出来るのだ。


俺は小走りで交番に入った。


そこにいた若い警官とは話がかみ合わないこともあるにはあったが、なんとか現状を聞きだすことが出来た。


ここは東京生まれで東京育ちの俺が聞いたこともない東北の小さな地方都市であること。


そして俺が友人宅で気を失ってから、ほぼ一年もの年月が経過していることがわかった。


――一年?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る